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さっきの場所とは打って変わって、人の話し声がほとんどなく、機械音が至る所で鳴っている。
薄暗い室内の灯りは、様々な場所に置かれたゲームの画面を明るく目立たせる役目をしていた。
一緒にUFOキャッチャーの島を見て回る。
遊園地の時はあまり意識しなかったけど、こうして側で近くにいる彼をみていると、無性に胸が高鳴る。
この雰囲気が格好良さをより引き立てているからかな。
それとも、マフラーのせい?
落ち着かない心臓を抑えながら、冷静を保つように取り繕う。
「あ!これ...可愛い」
「?」
UFOキャッチャーの窓を覗き込む。
テテはポケットから財布を出し、コインを投入すると台の前に両手をつき、真剣モードに入った。
しゃがんだり横に回り込んだりして、色々な角度から狙いを定め、確実に獲物を落とそうと試行錯誤している。
これ、話しかけたら絶対怒られるやつだ。
私は静かに後ろから見守る事にした。
位置を決めたアームはまっすぐ標的に向かって下がっていく。
「お」
「!」
クレーンは間違える事なく、景品をしっかりと掴んで持ち上げ、そのままブラックホールへ連れていく。
♪〜
軽快な効果音とともに、目当てのものが落ちてきた。
「すごいすごい!天才!まさか1回で取れるなんて!」
見事に勝ち取った勇者は、へへ、と誇らしげにしている。まさか本当に1回で取ってしまうとは思わなかった。そういやテテってこういうゲーム得意なんだっけ。
「ありがとう!大事にするね」
はにかんだ様子で、少し照れくさそうに視線を外へ向ける。彼の可愛い一面に心が温かくなりながらも、少し違った気配を感じた。
「...」
どこからか視線を感じる。
気のせいだったらいいんだけど。
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作者名:あぽ | 作成日時:2023年12月28日 5時