20v ページ20
.
静寂に包まれた部屋に来客を知らせるベルが鳴り響く。
ガチャ
「...大丈夫ですか？」
「うん、」
中に招き入れ、扉を閉める。
周囲を見渡した後、近くにあった大きめのソファーに座った。
「...来てくれて、ありがと...」
「ん、」
テテは頷いて、深く腰掛けた。
換気口から空気が通り抜ける音や冷蔵庫のモーター音がよく聞こえるくらい、静かな空間が広がる。
外の景色を眺めては、時々こちらの様子を気にしているようだった。
本来であれば、色々話さなきゃと焦るのに、不思議と落ち着いていられた。いや、きっと昔だったら相手を待たせないように、思考をフル回転させて忙しなく行動していたと思う。
でも、今は、これまで築き上げてきた関係性があるから、自然体でいられる。沈黙が続いても息苦しくない。
そうだよ、お互いを心から信じる事ができているからこそ会話が無くても楽でいられる。
「...昔さ、田んぼ道を歩いている時に」
「うん」
「幸せですか？ってきいてきた事あったよね、」
「うん」
「あの時は答えられなかったけど...」
立ち上がって、ソファーにいる彼の横に腰を下ろす。
近い距離で顔を見ながら会話を続ける。
「テテと一緒にいる時が...」
「...」
「...」
次に出てくる言葉は決まっているのに。
喉がきゅっとなって上手く出せない。
「...」
「...無理しないで」
頬が冷たくなってから、涙が溢れている事に気づいた。
「...っ、」
テテは私が泣いているのがわからないように、優しく抱き寄せた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 30人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あぽ | 作成日時：2023年12月28日 5時
