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花巻貴大:感興 ページ3

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「花巻、柳川さんが呼んでるよ」



クラスメイトの女子にそう告げられたのは昼休みのことだ。食い終わった弁当を仕舞ってから廊下に視線をやると小さく手を振る及川の彼女の姿を認識したので黙って廊下に出ると、「場所変えてもいい?」と気の強そうな綺麗な顔にうっすら笑みを浮かべた柳川。

取り敢えず断る理由も特段ないので頷く。




「ねえ花巻、取引しよっか」

「____は?取引ィ?」

「そうたねえ、徹くんの周りに群がる虫けらの排除手伝ってくれるなら花巻がこないだ言ってた女の子の連絡先教えてあげる。それでどう?」

「お前って本当に悪魔だよな……」

「ふふ、褒め言葉。で、やるの?やらないの?」

「わーったよ、」




満足そうに微笑んだその女__柳川Aと俺がこんな性格の悪い取引をするのはこれが初めてではない。及川は知らないだろうけど、こいつは裏で及川のことが好きな女を片っ端から“お片づけ”しているし、所謂ぶりっ子で男好きの最低女、だ。


現実は夢小説のようにうまくいかないらしい。

可愛いが正義なのだ。いつだって可愛い柳川が及川の中では一番なのだ。歪んだ愛情だって、及川は甘受している。柳川にそのポジションを譲る気は毛頭ないし、きっとそれは代わることができない。



「花巻ってほんといい性格してるよ、ちゃんと最後までよろしくね?徹くんに言ったらあんたも潰すから。」


「俺が及川に言ったことあるかよ。つかお前、こんなこと必要ねえんじゃねぇの?及川、そんなことしなくてもお前にベタ惚れじゃん」



「は?何言ってんの、徹くんには私とバレーとあの幼馴染だけでいいの。それ以外の煩わしい種は私が取り除いてあげなくちゃね」




悪魔のような女だと評したのは誰だっただろうか。この美貌の前には正義も及川徹も降参なのだろうか。にたりと口元に三日月を描いた柳川の顔はこの世のものとは思えないくらい恐ろしくて、それでいて美しかった。



__もう私と同じところまで落ちてきたじゃない?綺麗だった頃の俺はどこへ行ったのだろうか。単なる好奇心、女の子の連絡先なんて本当の目当てじゃないに決まってる。ただ柳川に興味があるだけだ。



こいつのシナリオに登場する一人の人間で、共犯でありたいのだ。
ただこのカップルの行く末は地獄か、はたまた天国か、着地点を一番近くで最後まで傍観していたいだけだ。

御愁傷様、名前も知らない女の子。悪魔に目をつけられたら最後だよ。

松川一静:洞察→←岩泉一:忌諱



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作者名:松下 | 作成日時:2019年10月29日 7時

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