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「A、」
僕の想いが通じていると思っていた。
初めて会った時は落ち着かない人だなと思ったけど。
でも放っておけなくて。
いつしか、守らなきゃって。
ずっと、笑顔でいられますように。
僕が側にいれない分、君を守るように願いを込めたお揃いのマスコット。
きっと僕は、命の恩人でしかないから。
今回どこかですれ違って会えるかもって、期待してた。
それは早い段階で叶って。
空港で再会した時、喜んでいいのかわからないと言われて、すごく落ち込んだ。
僕だけが浮かれていて、全然受け入れてくれてないんだなって。
アーティストだから、距離を取りたくなる気持ちもわかるけど。
その前に、僕は一人の男性、ジョングクだよ。
君と同じ心を持った人間。
好きだから、一緒にいたい。
でも僕は、不器用だから。
上手く振る舞えなくて、怒らせてしまった。
僕のせいで、悲しませてしまった。
ライブで一か八か合図を送ってみた。
もしかしたらうんざりして、このライブを観てないかもしれない。それでも想いが届くように信じて。
約束の場所にいる姿をみて、内心飛び跳ねた。
まだチャンスがある。
振り向いてもらえるように。
何度も認めてもらえるように頑張るから。
これからも。
「A...」
あの時、腕を引っ張って押し倒してしまえばよかった。
施設を出て、滞在しているホテルの部屋でお酒を交わした。彼女は飲めないから、という理由でノンアルコールだった。
「ごめん、」
「えっ」
「僕、口下手だから、上手く話せなくて」
「...」
「...」
言わなきゃ。
「...」
「...」
長い沈黙が続く。
「...」
「A、」
一旦、深呼吸する。
「...」
ああもうどうして、こういう時話せないんだろう。
その様子を見兼ねた彼女が口を開く。
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作者名:あぽ | 作成日時:2023年7月7日 8時