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『では、お名前教えていただけますか?』
またあの舞踏会の日のように、彼女の声だけが聞こえてる
マネージャーが司会の端で口をパクパクさせてるみたいだけど、
そんなの今の僕にはどうでもいい
僕はなかなか声も出せずに、ただ目の前の彼女を見つめる
『あ、あの、ジョングクさん?』
目の前でひらひらと振られる手のひら
可愛らしい小さな手だな
その瞬間に、周りの音が僕の耳に戻ってきた
「なんだよ、名前知ってるのに聞いたのか?」
『本人確認です、形式ですよ、形式』
マネージャーと話しながらケラケラと笑う彼女
『お名前、教えていただけますか?』
「僕は……ジョングクです」
言えた、今度はちゃんと最後まで
『はい、ではこちらに受け取り確認のサインと
念のためロックの解除をお願いします』
そう言ってスマホを僕の顔の前に向ける
あの日のように緊張したけど、スマホのロックはまた
カチャリと音をたてて解除された
ふっと見せてくれた笑顔
その笑顔は、夢の中と同じものだった
あの夢の世界で、僕と王女様を繋いでくれたこのスマホは
この世界でも僕と君を繋いでくれたんだ
もう一度会えたら言いたかったんだ
「僕にも名前、教えていただけますか?」
fin .
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作者名:紫 | 作成日時:2022年9月6日 2時