グクデレラ (ページ24)

今日:2 hit、昨日:3 hit、合計:15,083 hit

24 ページ24

名乗ろうとた瞬間
けたたましくこの場に似つかわしくない
大きな音がフロアに鳴り響いた
音の出どころは僕のポケット
それで全ての音が耳に戻ってきた

その音にはっとする
毎朝聞き慣れた無機質な電子音
それは紛れもなく、僕がここに来る直前に設定した
アラームの音だった
僕は朝が弱いから、アラームの音量はいつでも最大

シンデレラのストーリーを知っている僕は
余裕を持って11時55分に設定しておいた

周りの目が僕に集中する
王女様と踊る僕は随分と前から見られていたようで
怪訝そうな視線や、ヒソヒソと耳打ちをする人もいるようだ

我に帰った僕は王女様と繋がれた手を離して距離を取る

「すみません！僕はこれで！」

『あ、ちょっと！』

ここに来る時
夢の世界だし別に魔法がバレてもいいか
むしろバレたところを見てみたいなんて思ってた
そんな場面は本物のお話の中では見られないから

でも実際、もうきっと、あの瞬間に王女様に恋心を抱いてしまった僕は
何があっても格好悪い自分を見られたくなかった

家族に冷たくされている僕
着ていく服すら用意できない僕
魔法で取り繕った僕

何一つ、彼女には見られたくない