悲劇姫【わたしの幸せな結婚】 (ページ8)

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子葉　２ページ8

『妹としてですよ。
両親が亡くなってから私は久堂家の娘として育てられてきたと言っても過言ではないのですから』

「でも、清霞様の髪の毛を縛っている髪紐はAさんが結ったんですよね」

『そうですけど
それとこれは何か関係があるのですか？』

「これは、お父様の取引相手の清霞様の学校と同じ学校に通っている殿方から聞いた話なのですけどね」

『えぇ』

「学校の先生が“そんな長ったらしい髪は切れ”って言ってきたらしいの。そしたら“髪を切ったらせっかく作ってもらった髪紐が無駄になるのでそれはできません”って答えたらしいのよ。」

Aにとってはそれがどう繋がるのか分からなかった。
所詮、それも髪の毛を切らないための口実だろうと考えてしまう。

清霞は自分の気持ちを直接的にAに話したことはなかった。だからこそ、今のような状態になってしまっているのである。

「話はまだあってね。
その後、先生に呼び出されて怒鳴られたらしいんだけど“先生は自分の妻から作ってもらったその飯をお弁当箱に入れるなどおにぎりを好んでいる日本国民としてありえない。今すぐ捨てろと言われたら捨てれますか。俺の髪は、髪紐はあなたの妻からいただいたもののように大切なんです”って鬼の形相で言ったらしいの」

『鬼の形相...』

「大事なのは発言よ！
つまりAさんのことを奥さんと言っているの同然じゃない。もうキュンキュンしちゃう」

Aはなんともいえない気持ちに陥っていた。

周りに自分が何か言われるのは慣れているので大丈夫だ。
でも、清霞が言われるのは訳が違う。

Aは一家としても落ちた橘家の生き残りで親から捨てられた娘だと。そんな娘を引き取っただけでも悪く噂される久堂家の長男がその娘のことが好きだのいえばもっと悪く言われるのは防ぎようができない。

『そうですね』

「興味なさげね
いくら久堂家にお世話になっているからと言っても婚姻はどこかしらの殿方と一緒になる訳じゃない？
Aさんは人気だから選べるわね」

『血に落ちたなんの力もない橘の血などどこの家もいらないですよ』

「ほぅだから名家である久堂家がAさんを娶ればプラマイゼロね」

『はて。』

恋愛話たくさんの女学生生活を送っている橘Aなのである