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百花の王が咲くことはない ページ36

「…君も、あの子と同じで飲み込みがいいねぇ」

「あのこ?」

「椿、という人だよ。…君の妹君だったかな」

「…椿は、私の家の養女でしてよ。…後継には向きませんでしたの」

「なるほどねぇ…」



「お前が、あの子みたいに霊力さえあればね」

「…きっと、ねえ」


「今日からこの人が我が家の後継だ。…霊力、身分共に申し分ない!」


「…お父、様?…お母様!いやです!待って___」


嗚呼、いやな記憶ばかりが残る

椿さえ、いなければ。私の親は「霊力」を知ることがなかった

私は、愛を享受できた


「君、実技もできているね。いつ本丸を持っても平気そうだ」

「ありがとうございます」

「…そういえば、君、歴史を守る理由はあるかい」

「これから見つけていければいいかな…と思っております」

「なるほど。それもいいねえ…。乱、桔梗を呼んできてくれるかい?」

「いいよ!…あるじさん、居場所知ってる?」

「多分今は歌仙のところじゃないかな?…あの子は最近、詩歌にはまっているから…」

「わかった!」


「…桔梗、とは?」

「私の孫娘だよ。…どうせなら、君と一緒に学ばせようかなと思ってね」

「…桔梗殿は、審神者に?」

「そうだねぇ…ゆくゆくはここの後任に出来たら…と思っているよ」

「そうなのですか…そこまで優秀なお方なのですね」

「…うーん…まだ7つに満たないからねえ」

「あら、幼いのですね」

「ああ。…刀剣と、よく遊び、よく学ぶ。…幼いからできる芸当だろうね」



「乱、ありがとう。あれ、君はどうしたんだい?」

「別に」

「ボクじゃ抱えて持っていくのは難しいから、抱えてもらったってわけ!」

「なるほどね、…ありがとう」

「別に」

「ほっぺを突っつきながら言うセリフでもないと思うよ…」

「…起こしてるんだ」

「えー。ボクはこの寝顔を見てたいけど」

「…まあ、ね…でも、まあ」

「審神者殿、私は別に構いませんわよ。…それより、明日、私はここを出ますもの。未練が残っても嫌ですわ」

「そうかい…?ならお言葉に甘えるとしようか」

「ええ」



1人を好む、孤高の存在

それに、運ばれる少女

こいつの孫というだけで

まあ、いいわ。…私も本丸を持てばきっと

もっと楽しいことができるはずよ



でも、彼は無条件に馴れ合ってはくれなかった


私が、あの人の孫であったなら



あの美しい竜王と、遊べたかもしれないのに



ふと、手を伸ばす

手を擦る衣にはすでに血が飛び散っていた

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作者名:シャボン玉 | 作成日時:2019年9月22日 17時

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