夜中の散歩 ページ42
ぱたぱたぱた、と足音がする
もちろん夜警の短刀にはバレているが、本人は気づいていないみたいだ
…さて、そろそろ襖が開く頃かな
「…あおえ」
「こんな夜更けに来るなんて…何がお望みだい？」
大方、散歩だろうけど
「おさんぽ。ほたるがみたいの」
ほらね
「…だめ？」
「いいよ、…みんなには内緒だ。いいね？」
「うん」
「じゃあ、何か羽織っておいで」
「もってきてるよ」
「おや」
さては、最初から僕のところに来るつもりだったな？
断られる事を予想しちゃいないんだからねぇ…
「で、蛍が見たいのかい？」
「うん。…夜にならないと見えないけど、夜はお外に出ちゃだめだから」
「僕といけないコトをしようって事かい？」
「そ。いけないことのおさそいに来たの」
「ふうん」
誰がそんな言葉を教えたのやら。…あぁ、僕か
「ほたるってさ、黄色？」
「さぁ？」
「ふーん。…あ、もしかしてあれ？」
「…あれだねぇ」
「捕まえてもいい？」
「あまりお勧めはしないかな、あまり長生きでもないんだからさ」
「あおえがそういうとは思わなかった」
「そうかい」
「うん。だって…ユーレイ斬りなんでしょ？」
「まあね。…ちょうどこんな夜に、君くらいの幼子を斬ったんだよ」
…嫌な感覚ではなかった気がする。まぁ、母君はまだ斬っちゃいないけどね
「おなじ、くらい？…お母さんいたの？
「…酷だと思うかい？」
「ううん。…お母さんがいたなら、うらやましいなって思った」
ふと、水面が揺れた。木々がざわつき始めた
「どうしたんだい？」
「…なんでもない」
そう言いつつ、その瞳からは涙が溢れだした
あぁ、そうか
この子はとんでも無く寂しがりで、今はまだ霊力が暴走しやすいんだった
「おひいさま、…大丈夫かい？」
「…っ…うん…」
だめだな、…どうしようか
「うぁぁ、…っあぁ…うぅっ…」
「おひいさま、落ち着いて。…頼むから、ね？」
『…坊やのお守りはどこ行った…あの山越えて里行った…里の土産に何貰うた…でんでん太鼓に笙の笛…』
「…あ…ぁ…」
『彼女』は、おひいさまが寝ついたのを確認して
にっかりと笑った
「…君、出て来れたの」
『…子を、寝かしつけるのには苦労しますわ』
「そうだねぇ…君がいてくれてよかったよ」
『そうでしょう？…さ、寝ているうちに』
そう言って、『彼女』は戻っていった
「君も僕も、おかしなものだよね」
さて、どうやったら乱くんに怒られずにすむかな
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作者名：シャボン玉 | 作成日時：2019年9月22日 17時
