白い椿の話 ページ26
なんで、歴史なんか守らなくてはいけないのだろう
「お前に家は継げない」
「お前じゃなくて、この子に霊力が有れば…」
「才能ないよ、あんた」
「…審神者にしたら、あの子をお払い箱にできる」
「そうだな、そうしよう」
「椿様、本日よりこちらの本丸で研修を受けていただきます」
「…君、歴史を守る理由はあるかな」
その言葉に答えられなかった。
だって、歴史を変えれば私は
両親が死ぬことは無く、円満に暮らせるはずだから
鍛刀技術や、結界、手入れの仕方、采配
全て学ばせてもらった。
でも、出来ない
身につかない
でも、審神者になれなかったら私は
もう後がない
でも、審神者にはなれない
なりたくない。私だって両親に愛されたかった
もう、なんと言っても助けてくれる人もいない
ぴしゃ、と池に足を踏み入れる
「母様、父様…」
お会いしたいです
池に波紋が広がっていく
嗚呼
会いたい
両親に会いたい
今すぐ
池の底にいって、永遠に息を止めよう
そうしたらきっと
ぱしゃぱしゃ、と音を立てて歩き出す
膝の辺りまで池に浸かった時
「待って!!!」
声が響いた。子供特有の、高い声
聞く必要も無いと、歩みを進めた
けど、進めなかった。目の前に、壁があった
薄青の、透き通った壁…結界
「待って!いっちゃだめだよ!」
「…なによ、なんでよ…」
邪魔をしてくる子供が、気に障った
「私の邪魔を、しないでよ…」
「だって、ないてる、だめだよ、いまいったら」
さらわれちゃうよ
そう言って、少女は駆けてきた
「こっち!」
そっちはだめだよ、さびしいよ
「おねーさん、だめだよ。死んじゃうよ」
「別に、いいわよ…」
「…なんで、ないてるの」
「…」
「悲しいの?」
「…」
「痛いの?」
「…」
「…さびしい、の?」
その言葉が、すっと胸に落ちた
「寂しいんだったら、これ、あげる」
白い椿を渡された
「においないけど、きれい」
「…ありがとう」
「そうそう、白ってね!いろんな光をまぜてできるんだって!」
「…よく知ってるのね」
「すごい?」
「ええ」
「いろーんな色をまぜこぜにしてもさいごはきれいな真っ白なんだね!すごいよね!白」
「そう…」
なぜか、涙が止まらなかった
「すてきな花とすてきな色だから、さびしくないよ」
「…ありがとう」
気づけば、鍛刀も手入れも出来る様になっていた
私が戦う理由は
あの子が消されないため
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作者名:シャボン玉 | 作成日時:2019年9月22日 17時