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1月1日 元日

彼らの間に何事もないいつも通りの日常が戻って来ていた。
正月とは思えない空気ではあるが、彼らなりの何気ない当たり障りない日常にどこかホッとしてしまう。

昼を過ぎた頃、Aを除く一年生は学生寮の談話室で談笑をしていた。

3人と1匹が話に花を咲かせていれば、寮の扉が開かれる音が鳴る。
扉を開いたのは村に一時帰省をしていたAだった。
まさか正月なのだからもっとゆっくりとして帰ってくるかと思っていた彼らはしばらく呆気にとられる。


「おかえり〜!早かったな、もっとゆっくりしてくるかと思ったぜ。どうだったよ、久しぶりの家は」


空気を察したパンダが軽快な口調で話しかけるが、Aからの返答はない。
心なしかAの表情が暗い気がする。
ここで既に全員がAの様子がどこかおかしい事に気がついていた。
異変に誰よりも早く気がついた真希が怪訝そうに彼女の名を呼ぶ。
そこでやっとAの口が動いた。


「玖吼理が…」


一言小さくポツリと呟いたAの目からぽろぽろと涙が零れる。
堰を切ったかのように彼女の涙は止めどなく溢れた。
その場にいた全員が言葉を失う。
小さく嗚咽するAに4人の友人はそっと側に駆け寄った。


「A、どうした、何があった?」

「こんぶ?」


真希や狗巻が口々に事情を問うが、Aは何も話さない。話せなかったのだ。
あんまり心が追い付かないものだから自分でも感情の整理がつかず、話そうと思っても喉がつかえたように言葉が出てこない。
どう話せばいいのかわからず、Aは力なく首を横に振った。


「…一旦、部屋に戻るぞ」


今ここで話を聞くのは難しいと判断した真希はAの肩を擦り自室に戻るよう促す。
乙骨達には今はそっとしておくように目配せをして、未だ涕泣するAの肩を抱くように連れ真希は談話室を後にした。

ぽつりと残された乙骨たちは呆然とその背中を見送る。
あんなに悲愴な様子のAを目にするのは初めてだったためか彼らにとっても衝撃だった。
あんなに泣くことなど今までなかった友人がただひたすら自らの胸の抱いて嗚咽を零しながら泣いていたのだ。


「やっほ〜!!…なんか暗くない?正月だよ?なんでそんなテンション低いの」


突如現れた高身長の白髪に狗巻とパンダはため息を吐く。
本当にこの男はタイミングとテンションを考えて行動しない。
今に始まったことではないが、未だ喧しくちょっかいを出してくる教師にまたもため息が出た。

・→←7話 沈黙



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作者名:にる | 作成日時:2021年2月10日 1時

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