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目に入った片っ端から祓う、祓う、祓う。
Aは玖吼理と共にビルの合間を滑空する。
半身を食われる寸前の術師を掴む呪霊の腕を玖吼理のナイフで切り落とし、間髪入れずに頭と胴体も切り離した。
空から襲ってくるものは光線で貫く。
そのまま上昇し、上から視界に収めた呪霊を光線で各個撃破し続ける。サーチ・アンド・デストロイだ。
かなりの数は祓っているはずなのに一向に終わりが見えない。
ほとんどは二級程度のものだろうが、呪霊千体というのは間違いないのだろう。
推定一級の呪霊を祓い終えた時、少し離れた場所で轟音と土煙が上がった。
呪霊を祓いつつその方に目を向ければ、黒人男性と五条が交戦している様子が視界に入る。
「(五条先生と…あれは呪詛師か)」
異人の呪詛師の方は防戦一方であるように見えるのに対し、五条は決定打を打たない。
否、打てないの間違いだろうか。
そこでAはふと疑問に思う。
何故五条悟が夏油傑の相手をせず別の呪詛師を相手にしているのか。
あたりを軽く見渡してみても他の呪詛師の姿はあっても夏油の姿だけは一向に見当たらない。
彼の目的はこの百鬼夜行であったのではないのか。
夏油傑の目的。
一つの疑問にゾワリと嫌な予感がAの全身を駆け巡った。
非術師を殺したいのであれば、わざわざ高専に宣戦布告をしに来る必要なんてない。
これだけの呪術師を集結させて本人がその場にいないだなんて、まるで別の目的があるかのよう。
別の目的?そんなもの…
Aは夏油が高専に宣戦布告をしに来た時のことを思い出す。
ああ、彼だ。
すれ違う呪霊、呪詛師、仲間の術師でさえ振り切って、Aは一直線に高専の方角へ向かう。
遮蔽物のない遥か上空を最短でかけ抜ける。
新宿に呪術師が集結した今、高専の警備はザルも同然。
そんな状態の高専で今一番狙われるものといえば、乙骨憂太以外ありえない。
正確には彼の中の里香、彼女の呪力はあの五条悟でさえも凌ぐのだから。
夏油が乙骨と里香を欲するのも何らおかしくはない。
あるいは必要なのは里香であって乙骨自体はさほど重要じゃない可能性も十分にあり得る。
ここまで大がかりな戦争でさえ、手薄になった高専で乙骨を狙うためのただの陽動に過ぎなかった。
もう遅いかもしれない後悔が後を絶たない。
せめてもと自分の友人達の安否をひたすらに願いながらAは全速力で玖吼理を飛ばした。
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作者名:にる | 作成日時:2021年2月10日 1時