8-14 ページ14
『ありがと…』
助かった。
タクシーに乗り込んで、ようやく息をつく。
『さっきの、誰？』
『さっきの…って？』
視線を前へと向けているヒョンジュンはどことなく不機嫌に見えて。
聞き返すのがためらわれる。
『さっき、いっしょにいた男』
…田中くんか。
『…前に付き合ってたひと』
『なんで、いっしょにいたの？』
『なんでって…』
どうして今日に限って根掘り葉掘り聞きたがるんだろう。
いつもと違うヒョンジュンに首を傾げながら、今日の出来事をかいつまんで話した。
『オンナってなに考えてんのかわかんねー』
私にもわからないよ…。
『いつごろつき合ってたの？』
『田中くんのこと？』
『あいつ、そういう名前なんだ？』
『あいつって…失礼な』
直截な物言いに笑いながら、あのころのことを思い出す。
ヒョンジュンと別れて、寂しくて辛くてたくさん泣いた。
こっちの大学に進学して、バイトして。
そこで知り合ったのが田中くんだった。
いっしょにごはんを食べに行って。
バイト仲間みんなで海に行ったり、梨狩りに行ったり。
好きだ、といわれて、断る理由はなかった。
『ヒョンジュンと別れて４年たったくらい、かな？
優しくて、おおらかな人で。好きになれると思ったの…』
手を繋いで、キスをして。
それから…。
『…４年？
その間、カレシは？』
『いなかったよ？』
『え！？マジで？』
サングラスを外して身体ごとこっちへ向き直る。
よほど信じられないのか、目が落っこちそう。
『ふーん、ヒョンジュンはちがったんだ？
そんな簡単に忘れられるくらいにしか、好きじゃなかったと思ってる？』
『いや、そうじゃないけどっ』
しどろもどろになるヒョンジュンをひじでつつく。
『でも…、好きになろうと思ってなれるものじゃないんだよね』
あのとき、田中くんに言われたこと。
“Aは、俺のこと嫌いじゃないけど、好きでもないよね”
自分だけが傷ついたと思っていた。
でも、今ならわかる。
私も、田中くんを傷つけてたって。
『ねえ、ヒョンに会えなくて寂しい？』
『…それは、』
もちろん、と言おうとして、メールの着信音に言葉が途切れる。
…ソニちゃんからだ。
添えてある画像に、爪を立てられたみたいに胸がひどく痛んだ。
『どうしたの？なにかあった？』
『ううん、なんでも…』
口を開くと、声が震える。
『この間も、そういってたじゃん』
なに？と聞かれても、答えられない。
『私がわがままなだけなの…』
涙をこらえてそう言うのが、精一杯だった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 708人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「東方神起」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
めぐ(プロフ) - じぇじゅりさん» じぇじゅりさん、ありがとうございます！…お恥ずかしいです、穴があったら入っちゃいます（照）常に文字数との戦いなので（爆）どうしても漢字変換せざるをえなかったりします。読みづらくて申し訳ないです…。こちらこそ、これからもよろしくお願いします♪ (2015年3月21日 0時) (
レス) id: 46fc89fa39 (このIDを非表示/違反報告)
じぇじゅり(プロフ) - めぐさんの小説のジェジュンが一番好きです。本当にジェジュンそのままって感じがします！そして本物の小説家のようなめぐさんの表現力と語彙力！たまに辞書をひいてますw← これからも楽しみにしてます♪ (2015年3月20日 10時) (レス) id: 9555d17b04 (このIDを非表示/違反報告)
めぐ(プロフ) - Σ(；ﾟωﾟﾉ)ﾉ…み、見つかったちゃったぁ…（←え？w）ただいま出産中です、意外と難産(；≧д≦)おぎゃーまでもうちょっとお待ち下さ〜い(*´ｪ｀*)ﾎﾟｯ (2015年3月20日 7時) (レス) id: 5da95cf7d2 (このIDを非表示/違反報告)
めぐ(プロフ) - alexisさん» 詩人から哲学者に…（笑）不平不満が出ると感謝の気持ちって忘れがちですよね。さぁ、今日もがんばるかー！ (2015年3月20日 7時) (レス) id: 5da95cf7d2 (このIDを非表示/違反報告)
みみ(プロフ) - |д･) ｿｫｰｯ… (2015年3月19日 23時) (レス) id: 5177a3f2a8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：めぐ
| 作成日時：2014年12月26日 0時
