46話 ページ46
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泣き腫らした瞳が見えないように俯いていると、彼が近づいてきた気配を感じた。
「やはりお知り合いだったんですね。」
「ふる……………安室ちゃんだって、昔、会ったことあるでしょ?」
萩くんは彼の正体も現在の状況も把握しているみたいだ。
その証拠に本名を言いかけて、言いにくそうに訂正していたし。
「警察学校時代に萩くんとは親しくしていた仲でした。
…改めまして、警察庁所属の警察官です。
おそらく、あなたと似た立場なので今まで隠していました。
あの少年がいる前では、お話するわけにいかなかったですし。」
「そうですか。
では以前、萩原について聞いたときも所属を隠すための嘘だったのですか?」
「いえ。記憶が曖昧なのは事実なんです。
詳しくは言いたくないけれど、昔あなたに会っていたとしても記憶にはないんです。」
今まで通り隠すことも考えたが、彼のしつこさは衰えを知らなそうだし、会う度に探りを入れられるのも辛い。
あとは、萩くんとの仲を見るに彼は警察官として信用できると思ったのも理由だ。
降谷零が非呪術師である手前、詳細は話さない。
呪いに巻き込んで、要らぬ危険に晒したくない。
米花町という犯罪都市で、市民をまもる警察官に新たな不安要素を与えるのは逆効果だろうし。
「疑いを向けて失礼しました。
こちらも正体をなかなか明かせる立場ではないので、今後も僕のことはポアロ店員兼私立探偵の安室透として接してください。
もちろん、萩原さんも。」
「はい、もちろんです。」
私へというよりは、萩くんに釘を指しているように思えたけど。
そんな2人の関係性が面白くて、思わずクスクスと笑い声が漏れてしまった。
微睡んだ空気を断ち切ったのは、やはり彼の問いであって聞きたかったことを逃さないその姿勢は、ゼロの人間味を感じる。
「Aさんが言った、白でも黒でもないとはどういう意味だったのですか?
あなたが僕と同じ立場なら、白だと思うのです。」
「…………………。そのままですよ。
純粋な正義を持つ警察官のようには、私はなれない。白にはなれないんです。
私の手は酷く汚れてしまっているから。
でも、完全な黒を選んでしまうほど信念も勇気もない。黒にはなりたくないんです。
でも、白も黒も私には眩しすぎることは明白です。」
今日はとことん私らしくない。
弱音も本音も全て零してしまう。
明日からはいつも通り、強い特級呪術師の私に戻るから許して欲しい。
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銀華(プロフ) - ryeさん» 教えていただきありがとうございます🙇♂️入力ミスです。訂正させていただきます。 (2022年7月5日 13時) (レス) id: 8ce225486e (このIDを非表示/違反報告)
銀華(プロフ) - 美月さん» コメントありがとうございます。警察学校時代のお話は番外編か、本編の後々に書けたら良いなと思っております。少しお時間頂戴してしまうかもしれませんが、楽しみにして頂けたら幸いです☺️ (2022年7月5日 13時) (レス) id: 8ce225486e (このIDを非表示/違反報告)
rye(プロフ) - 9話の降谷さんの所属、警察庁が警視庁になってます。 (2022年7月5日 10時) (レス) @page9 id: 6f680e21b1 (このIDを非表示/違反報告)
美月 - めっちゃ面白い!この小説の面白さを伝えるためにコメント欄に登場しました!警察学校組との絡みができてきたので、警察学校時代の物語も知りたいです! (2022年7月2日 9時) (レス) @page37 id: c0ec2f5f77 (このIDを非表示/違反報告)
銀華(プロフ) - 悠華さん» コメントありがとうございます。警察学校組とはあと2、3話くらいで少し絡みをもたせることができるかな~と考えております!もう少しお待ちいただけると幸いです🙇♂️ (2022年6月23日 15時) (レス) id: 8ce225486e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:銀華 | 作成日時:2021年12月24日 0時