43話 ページ43
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私の術式なんて興味なさそうな伏黒くんが聞いてくるとは思わなかった。
「謄写術式…あらゆる術式を謄写して使える。
簡単に言うとそんな感じ。
基本は呪力をぶつけるか、呪具で祓うから滅多に術式は使わない。」
「使おうと思えば俺の式神も?」
「うん、謄写すれば使える。
伏黒くんの術式は昔、五条が禪院の件を片付けたときに色々あって謄写した。」
あのときも私は五条に振り回されてたな。
本当、いつか、一発殴ってやる。
無下限解いてくれないかな。
思いの外、あっさりと術式開示をしたことに乗じてさらなる質問を受ける。
「去年の百鬼夜行にどうして参加したんだ?」
「…真希は随分、百鬼夜行のときのことを気にしてるんだね。
五条から乙骨くんを頼まれたからだよ。
でも、一番は夏油に直接聞きたいことがあったから。」
あの日、百鬼夜行のこと。
忘れたい。思い出したくない。
忘れたくない。覚えておきたい。
矛盾する気持ちの間で揺れる。
「聞きたいこと?」
「そう。…はぁ。そこまで言わせる?」
口を噤むこともできたけど、話せという目線が2年生、1年生からささって痛い。
「夏油にとって私たち同期も後輩たち仲間も全てが憎むべき対象になってしまったのか、聞きたかったの。」
学生たちが私の夏油への気持ちを察してくれたのかは、定かでは無い。
だけど、それ以上深くは追求してこなかった。
「高専の連中まで憎かったわけじゃない。
ただこの世界では私は心の底から笑えなかった。」
「呪詛師になって夏油は心の底から笑えたの?
私があの日、夏油の隣にいたら何か変えられた?」
「…呪いに縛られている限り、立場がどうなろうと心の底から笑うことはできなかったよ。
だけど、私はAの存在に間違いなく救われていた。
旧⬛︎⬛︎村の任務のとき、Aのことを思い出して一度踏み留まろうとした。」
「その夏油の踏み留まった想いを壊したのは私だよね。」
「違う。私がいけないんだ。Aは悪くない。
今までありがとう。
私はAのことが好きだったよ。」
一言一句、違えることなく覚えてる。
夏油と交わした最期の言葉。
この会話のあとすぐ、五条によって夏油は殺された。
ずるいよな。
勝手に"好きだった"って言い残して消えて。
置いていかれた私には伝えることすらできないというのにさ。
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銀華(プロフ) - ryeさん» 教えていただきありがとうございます🙇♂️入力ミスです。訂正させていただきます。 (2022年7月5日 13時) (レス) id: 8ce225486e (このIDを非表示/違反報告)
銀華(プロフ) - 美月さん» コメントありがとうございます。警察学校時代のお話は番外編か、本編の後々に書けたら良いなと思っております。少しお時間頂戴してしまうかもしれませんが、楽しみにして頂けたら幸いです☺️ (2022年7月5日 13時) (レス) id: 8ce225486e (このIDを非表示/違反報告)
rye(プロフ) - 9話の降谷さんの所属、警察庁が警視庁になってます。 (2022年7月5日 10時) (レス) @page9 id: 6f680e21b1 (このIDを非表示/違反報告)
美月 - めっちゃ面白い!この小説の面白さを伝えるためにコメント欄に登場しました!警察学校組との絡みができてきたので、警察学校時代の物語も知りたいです! (2022年7月2日 9時) (レス) @page37 id: c0ec2f5f77 (このIDを非表示/違反報告)
銀華(プロフ) - 悠華さん» コメントありがとうございます。警察学校組とはあと2、3話くらいで少し絡みをもたせることができるかな~と考えております!もう少しお待ちいただけると幸いです🙇♂️ (2022年6月23日 15時) (レス) id: 8ce225486e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:銀華 | 作成日時:2021年12月24日 0時