36話 ページ36
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心当たりは全くない。
守りたい、と思うほど彼に思い入れがあるとは考えられなかった。
「Aが守ったおかげで彼は一命を取り留めた。
だけど、彼は呪力の耐性をほとんど持たない非呪術師だ。」
「じゃあ…、この人は私の呪力で呪われたってこと?」
上手く息ができない。
自分は呪術師として、非呪術師を救えていると信じて疑わなかった。
だけど私のせいで、この人が呪われたというのならば、私は呪詛師と何ら変わりない存在となる。
「落ち着けよ。」
「……。」
高専時代の五条のような口調に思わず、ハッとさせられる。
「Aの呪力に彼があてられたのは間違いない。
でも、弱っている彼を呪ったのは呪詛師でAじゃない。
Aはその呪詛師を捕まえて、解呪するように迫ったんだよ。」
「ならなんで彼は呪われたままなの!」
「そいつが自害したから。
だからAは死んだ呪詛師の術式を謄写して、自ら彼を解呪しようと試みた。
まあ、その前に天与呪縛で記憶を失ってその解呪は実現せずに7年も月日が経ったんだけどな。
謄写したときに頼まれた。
もし、記憶を失ってもこの病院に来たら本当のことを伝えて欲しいって。」
五条から語られた事実は、何とか受け入れることができる内容だった。
「つまり、私が呪詛師の術式を謄写したことによる天与呪縛で記憶を失い、この人は7年間呪われたままだったってことか。
五条なら私に適当なこと言って、すぐにここへ連れてくれば7年も放置せずにすんだじゃん。」
「できなかったんだよ。
俺はAが天与呪縛を受け入れるのに苦労してるの知ってるから。」
五条なりの優しさだったのか。
天上天下唯我独尊。
超がつくほどの俺様。
五条はそんな奴だった。
そういう所が私は面倒くさくて、ウザくて、嫌いだったけど、存在は認めていた。
だから、こいつの優しさを責めることなんてできないんだ。
「…ありがとね。
さて、あんたの六眼でこの人の呪いを詳細に教えて。
そんでもって解呪の仕方も。」
「グットルッキングガイの僕に任せなさーい!!」
やっぱり、五条はクズだ。
こいつの優しさに感激した自分を呪いたい。
五条の相手なんかするより、さっさと呪解してしまいたい。
そう、強く思ったとき病室の扉が開いた。
「萩の病室で何やってんだよ。あんたら。」
ガラの悪いサングラス姿の男の声がどこか懐かしい気がしたのは気の所為だろうか。
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銀華(プロフ) - ryeさん» 教えていただきありがとうございます🙇♂️入力ミスです。訂正させていただきます。 (2022年7月5日 13時) (レス) id: 8ce225486e (このIDを非表示/違反報告)
銀華(プロフ) - 美月さん» コメントありがとうございます。警察学校時代のお話は番外編か、本編の後々に書けたら良いなと思っております。少しお時間頂戴してしまうかもしれませんが、楽しみにして頂けたら幸いです☺️ (2022年7月5日 13時) (レス) id: 8ce225486e (このIDを非表示/違反報告)
rye(プロフ) - 9話の降谷さんの所属、警察庁が警視庁になってます。 (2022年7月5日 10時) (レス) @page9 id: 6f680e21b1 (このIDを非表示/違反報告)
美月 - めっちゃ面白い!この小説の面白さを伝えるためにコメント欄に登場しました!警察学校組との絡みができてきたので、警察学校時代の物語も知りたいです! (2022年7月2日 9時) (レス) @page37 id: c0ec2f5f77 (このIDを非表示/違反報告)
銀華(プロフ) - 悠華さん» コメントありがとうございます。警察学校組とはあと2、3話くらいで少し絡みをもたせることができるかな~と考えております!もう少しお待ちいただけると幸いです🙇♂️ (2022年6月23日 15時) (レス) id: 8ce225486e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:銀華 | 作成日時:2021年12月24日 0時