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34話 ページ34





街中に数多いる低級呪霊を祓いながら、帰路を急ぐ余裕なんて持ち合わせていなかった。

痛む頭を押さえながら、とにかく自宅を目指す。


やがて、マンションのエントランスに到着した。



『早く、早く。』



最上階に住んでいる自分を恨むくらい、エレベーターを待つ時間すらおしい。



胸が逸るのを感じ、エレベーターに乗り込み自宅まで早足で歩む。

玄関扉を開けて、脱いだ靴を揃えることなく寝室へ。
ドレッサーに備え付けの引き出しから古いガラパゴス携帯を取り出した。

真っ先に電話帳を確認する。



______K.H

電話帳の中で、たった一つだけイニシャルで登録された番号をキーパッドに打ち込み発信。

コール音をしばらく待ったあと、無機質な音声が聞こえて落胆した。



「繋がらない…か。」



覚えていないが、過去の私も同じ行動を取っていたのだろう。


スクレ(警察庁警備局呪術対策企画課)に所属するとき、自分の痕跡を消したはずなのにこの番号だけが残っている理由が謎でしかない。

でも。
異様に警察学校時代の話を問い詰められたのと、安室さんから出た萩原研二の名前。

彼の名前を聞いてから止まることを知らない頭痛。


バラバラなピースを揃えていくと、必然的に導き出される答えは過去の私と何らかの関係があるということだ。



「警察病院に入院してるらしいから行こう。

例え話せなくても、会うことに意味があるもんね。」



決心が揺らがないように声に出した。



思い立ったら即行動。

簡単な荷物と古いガラパゴス携帯だけを握りしめて、自宅を出た。



大通りでタクシーを捕まえ、警察病院を目指す。

車内では増すばかりの頭痛に耐えるながら、思考を巡らすことに精を出す。



『天与呪縛のせいで、今まで多くの記憶を失ってきた。
記憶を失って、困ったことだってあった。

だから今回も大丈夫だよね。なんとかなる。


でも、こんなにも頭痛が激しくなったことは初めて……。』



不安は募る。

反芻する考えは誰に言えるわけでもない。


だから、ただ、私の中で留めておくしかないんだ。








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銀華(プロフ) - ryeさん» 教えていただきありがとうございます🙇‍♂️入力ミスです。訂正させていただきます。 (2022年7月5日 13時) (レス) id: 8ce225486e (このIDを非表示/違反報告)
銀華(プロフ) - 美月さん» コメントありがとうございます。警察学校時代のお話は番外編か、本編の後々に書けたら良いなと思っております。少しお時間頂戴してしまうかもしれませんが、楽しみにして頂けたら幸いです☺️ (2022年7月5日 13時) (レス) id: 8ce225486e (このIDを非表示/違反報告)
rye(プロフ) - 9話の降谷さんの所属、警察庁が警視庁になってます。 (2022年7月5日 10時) (レス) @page9 id: 6f680e21b1 (このIDを非表示/違反報告)
美月 - めっちゃ面白い!この小説の面白さを伝えるためにコメント欄に登場しました!警察学校組との絡みができてきたので、警察学校時代の物語も知りたいです! (2022年7月2日 9時) (レス) @page37 id: c0ec2f5f77 (このIDを非表示/違反報告)
銀華(プロフ) - 悠華さん» コメントありがとうございます。警察学校組とはあと2、3話くらいで少し絡みをもたせることができるかな~と考えております!もう少しお待ちいただけると幸いです🙇‍♂️ (2022年6月23日 15時) (レス) id: 8ce225486e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:銀華 | 作成日時:2021年12月24日 0時

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