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その話が終わったタイミングで折りたたみ傘を開く。
カチンと鳴るのと同時に弛みなく傘が開く。
決して大きくはないが軽くて丈夫だと評判が良くて購入した傘だ。
晴雨兼用傘だから裏側は真っ黒だけれども、表側は赤地に黒ドットという派手さが気に入っている。
年甲斐もなくとは思うけれど、好きな物に年齢は関係ない。
「可愛い傘だね」
開いた傘に目を落としたジョングクがそれを肯定してくれて、私も気分良く'でしょ'と返す。
「てんとう虫みたいで私も気に入ってる」
'あ、確かに'と大きな目をまた少し大きくしたジョングク。
傘を持つ私とは違ってジョングクの両手はコートのポケットに入ったままな事に気付く。
だってそう。
傘が無ければ帰れない。
大通りで迎えの車に乗るって、そんな事を言ってた気がするけどそれにしたってこの雨の中大通りまで傘無しで行くのは無謀というか無茶というか。
5分もかからない距離とはいえーーー
「もしかして、傘受け取るの忘れた?」
思いつくのはそれしかない。
問いかけにジョングクは私の傘から私に目線を移して'あぁ'なんて言うから、やっぱりって。
後ろを向いて軽く押せばすぐカフェのドアが開く位置にいるのは私。
「ちょっと待ってて、私取って来てあげる」
開いたまま傘を地面に置いて、すぐそこだから。
と、思ったのに地面に傘を置く前にジョングクが私の傘を手にして
「
そう言って素早くフードを被り、空いてるもう片方の手で私の手首を掴むと軒下から飛び出した。
傘に雨が降っては落ちるを繰り返す。
時々私の顔を見るジョングクはまるで初めて水遊びをする子供の様に楽しそう。
走る様に歩く私とジョングクの足元では水が跳ね上がる。
二人で使うには小さ過ぎる傘だったのに、ジョングクと別れて暫く経った後で私はどこも濡れてないと気付く。
大通りのど真ん中。
雨の中突っ立ったままでジョングクが掴んでいた手首を見つめる。
胸の奥で何かが微かに震えるのを感じた。
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かむ(プロフ) - aishinさん» 初めまして。いえ、こちらこそ読んで頂きありがとうございます。良かったらまた何度でも見に来てくださいねㅎㅎ (2月17日 21時) (レス) id: 40531361f3 (このIDを非表示/違反報告)
aishin(プロフ) - かむさんはじめまして 素敵なお話ありがとうございます。一気に読みました。ジョングクの不器用で優しいそして何より一途な魅力全開の作品です💕これからも応援してます (2月17日 12時) (レス) @page24 id: 2f5b0c03f1 (このIDを非表示/違反報告)
かむ - senra1003さん» ありがとうございます(;ω;) (2月12日 19時) (レス) id: 40531361f3 (このIDを非表示/違反報告)
senra1003(プロフ) - 最高です(т-т) (2月12日 1時) (レス) @page47 id: bf42e69a0b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かむ | 作成日時:2024年2月7日 22時