12 ページ12
本棚と私を交互に見て何故日本語の本を探しているのかというごもっともな疑問を碧斗が口にしたので端的に話しをした。
'へぇ'と興味があるのかないのか分からない返事をした碧斗が細長い目を少し見開いた。
私はというと碧斗から本棚に向き直ってさっき手に取りかけた一冊を今度こそ手に取る。
「俺も一緒に探すから、久々に会ったしせっかくだからちょっとこの後、どう?」
隣に立つ碧斗の手が私のとは別な本を手にしたのだけれど、空いてる方の手でグラスを傾けるような仕草をして見せた。
すぐ見当たる位置に時計はないけれど、退勤時間を考えてもまだ余裕がある。
「よろしく」
二つ返事でそう返し、二人で日本語の本に目を落とす。
:
:
:
「俺今度結婚するんだよね」
二回目の焼酎を軽く飲み干した碧斗の一言はあまりにも唐突で脈略がなく、飲みかけのグラスを口から離して'えっ'と声を出してしまった。
が、その後すぐにぐっと飲み干してとりあえずグラスを空にする。
空白の時間もあったし相手は誰かと聞いたところで全く知らない可能性も充分にある。
その点を考慮してとりあえず'おめでとう'とだけ言うとありがとうという言葉のかわりに照れ臭そうに小さく頭を下げた碧斗が網の上の肉を頬張る。
「よく考えたら…ていうかよく考えなくても、碧斗も私も他の友達もいつ結婚してもおかしくない年齢なのか」
「そうだよ。それで、俺は結婚を決めたわけだけど、Aはどうなの?」
「いや、見て分かるでしょ?結婚どころかまず結婚相手を探すところからなんだけど」
見て分かるかどうかはさて置き。
わざと呆れ表情を見せた私の頭を碧斗が笑いながらガシガシと撫でくり回す。
これは語学堂の時にも良くあった。
「俺の友達紹介しようか?」
「いい、いい!今そんな余裕ないし、その気持ちだけありがたく受け取っておく」
誰かを慰める時に碧斗がよくする行動だった。
碧斗のその手をぬるりと避けると'そっか'と笑って今度は私の肩を力強く叩いた。
久々の懐かしいやりとりが心地良くて、ちょっとのはずが気付けば焼酎の瓶が6本も空になっていた。
355人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
かむ(プロフ) - aishinさん» 初めまして。いえ、こちらこそ読んで頂きありがとうございます。良かったらまた何度でも見に来てくださいねㅎㅎ (2月17日 21時) (レス) id: 40531361f3 (このIDを非表示/違反報告)
aishin(プロフ) - かむさんはじめまして 素敵なお話ありがとうございます。一気に読みました。ジョングクの不器用で優しいそして何より一途な魅力全開の作品です💕これからも応援してます (2月17日 12時) (レス) @page24 id: 2f5b0c03f1 (このIDを非表示/違反報告)
かむ - senra1003さん» ありがとうございます(;ω;) (2月12日 19時) (レス) id: 40531361f3 (このIDを非表示/違反報告)
senra1003(プロフ) - 最高です(т-т) (2月12日 1時) (レス) @page47 id: bf42e69a0b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:かむ | 作成日時:2024年2月7日 22時