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横目でデスクの小さなカレンダーに目を向けると週末の予定は無し。
平日は私が書いた走り書きのタスクで割と埋まっているというのに週末だけは清々しい程の空欄だ。
ジョングクから来たメッセージとカレンダーの空欄を交互に見る。
その後で少し離れた所に座る上司に目を向けると目が合って言葉は発しないままで、また親指を立てて見せる。
つまり今の私に"断る"という選択肢はないのだ。
『こんにちは、週末大丈夫です』
返事をそう送って今度は携帯を伏せて置いた。
仕事に支障が出そうで。
そしてすぐにデスクの引き出しからポストイットを取り出して簡単に走り書きをしてデスクトップの一番目立つ位置に今日のタスクを貼り付けた。
"日本語の本買いに行く"
週末までまだ数日の猶予があるっていうのに。
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退勤時間ぴったりに退社をして本屋に向かう。
時間帯もあって大通りは人通りが多い。
見慣れた景色の中、本屋に足早に向かってるのは私くらいかもしれない。
すっかり陽の落ちた空には珍しく星が見えているけれど、その分寒くて早く店内に入りたいのだ。
店内に入ると暖かい空気で身体の強張りが緩む。
鼻を啜りながら顔をあちこちに向け日本語の本の場所を探す。
「A」
日本語教材で埋められた本棚の前に着いた私を誰かが呼んで、一冊目に伸ばした手を止めた。
'久しぶり!'と日本語で続けて私の元に来たその人物は、韓国の語学堂で一緒だった日本人。
「碧斗」
碧斗の言葉通り名前を口にしたのも久しぶりだ。
語学堂時代、他の留学生も交えてよく遊びに行ったり飲みに行ったりしたその中の一人だ。
男女とはいえ碧斗とは一切男女のそれはなくて、単純に留学生仲間であり友達って感じで。
語学堂を修了してからはみんなバラバラになって、国に帰った友達もいるし私も仕事で忙しかったのもあって会う事が減っていた。
だから最後に会った碧斗と印象が違っていてほんの数秒だけ半信半疑だったけど、ニカッと笑ったその顔は語学堂時代となんら変わりない碧斗本人の顔だった。
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かむ(プロフ) - aishinさん» 初めまして。いえ、こちらこそ読んで頂きありがとうございます。良かったらまた何度でも見に来てくださいねㅎㅎ (2月17日 21時) (レス) id: 40531361f3 (このIDを非表示/違反報告)
aishin(プロフ) - かむさんはじめまして 素敵なお話ありがとうございます。一気に読みました。ジョングクの不器用で優しいそして何より一途な魅力全開の作品です💕これからも応援してます (2月17日 12時) (レス) @page24 id: 2f5b0c03f1 (このIDを非表示/違反報告)
かむ - senra1003さん» ありがとうございます(;ω;) (2月12日 19時) (レス) id: 40531361f3 (このIDを非表示/違反報告)
senra1003(プロフ) - 最高です(т-т) (2月12日 1時) (レス) @page47 id: bf42e69a0b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かむ | 作成日時:2024年2月7日 22時