2 ページ2
「実はAにしか頼めない仕事があって」
ミーティング室には勿論椅子が何個もある訳で。
だが上司はそのどれにも座る気配がなくただ腕組みをしたままそう言った。
とりあえず怒られるような事ではないと理解はしたものの、後ろでバレッタを両手で握ったまま'はぁ'と気の抜けた返事を返す事しかできない。
私の戸惑いを察した上司が'いや'と話しを続ける。
「Aは日本人だけど、韓国語のスキルが高いし翻訳もいつも自然で的確でその腕を買っての頼みなんだよね」
「それは…ありがとうございます」
上司に目を向けるとうんうんと頷いて満足そうで、何も悪い事などしてないのに何故かホッとした気持ちになる。
「それで、どんな仕事か聞いても…？」
ホッとしたからか自然と口からそう出た。
窺うような顔をし続けてる私にまたうんうんと頷いた上司は組んでいた腕を解いて、今度はパンツのポケットに突っ込む。
「日本語の課外授業を、お願い出来ないかな、と」
日本語の？
課外授業？？
声に出したつもりはなかったけれど'そう'と返事が返ってきたから口から出ていたらしい。
でもかと言ってハッと口を噤む事もなく'いやあの'と矢継ぎ早に言葉が出てくる。
「評価してくれてる事はありがたいんですけど、私先生の経験とかないですよ？！」
「いやいや、そんな先生とか大袈裟に考えなくていいから」
「でも日本語教えるわけですよね？翻訳するのとはまた勝手が違いますし…」
眉間に皺が寄っているのが自分でも分かる。
だって急に日本語教えろって…
確かに私は日本人だけども母国語を誰かに教えるなんてそれはまた別の話で−−−−
「ボーナス二倍報酬でも、受けてくれ、ない？」
右往左往していた私の目が上司のその言葉を聞くとの同時に窺う様に出されたピースに留まる。
いや、目だけじゃなく言葉も決意も、だ。
二倍は−−−−ずるい。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 355人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
かむ(プロフ) - aishinさん» 初めまして。いえ、こちらこそ読んで頂きありがとうございます。良かったらまた何度でも見に来てくださいねㅎㅎ (2月17日 21時) (
レス) id: 40531361f3 (このIDを非表示/違反報告)
aishin(プロフ) - かむさんはじめまして 素敵なお話ありがとうございます。一気に読みました。ジョングクの不器用で優しいそして何より一途な魅力全開の作品です💕これからも応援してます (2月17日 12時) (レス) @page24 id: 2f5b0c03f1 (このIDを非表示/違反報告)
かむ - senra1003さん» ありがとうございます(；ω；) (2月12日 19時) (レス) id: 40531361f3 (このIDを非表示/違反報告)
senra1003(プロフ) - 最高です（т-т） (2月12日 1時) (レス) @page47 id: bf42e69a0b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：かむ
| 作成日時：2024年2月7日 22時
