月に叢雲花に風 (ページ8)

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"ジミニには気をつけてね"

地下鉄に揺られながら先輩の言葉を思い返していた。
今私の目の前には音楽を聴きながら携帯を忙しく弄っている学生とかドアに寄りかかって溜息を吐いてるサラリーマンがいるけれど、実際に頭が見ているものはそれじゃない。

先輩が手にハンドクリームをよく伸ばしている場面とさっき不可思議な行動をしたジミンを繰り返し見ている。

私の事を"取って食おう"なんてジミンが思ってる、とは流石に思わない。
じゃあスタッフが辞めたのは一体どういう事だったんだろうという点に止まる。
でも先輩は"ジミンが絶対的に悪いわけじゃない"と言っていたーーー

昼も夜も大半地下を走り続ける窓の外は大体いつも黒。
そこに疲れた自分の顔が映っているのだが、ジミンの人懐っこい笑顔が上書き投影される。

気をつけなきゃいけない人があんな顔で笑うかな…
そこまで考えて自分の降りる駅にままなく到着するアナウンスと音楽が流れた。

"考えてもしょうがない事"を考えていた事に気付いていないまま、地下鉄を降りた。

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私の毎日は慌ただしい。
忙しい。

ジミンやらジョングクやらと言葉を交わしたり少し戸惑う状況に見舞われた瞬間はそれっきり。
先輩の言う通り"関わらない"状態で過ぎていく。

時折すれ違う芸能人は確かにいるけれども、昼食以外はデスクワークこもり仕事をしている訳で週に一回、会うか会わないかくらいの頻度。

自分のスキルアップに加え慌ただしさ忙しさも重なって頭の中に余計な事を考える余裕などなくなっていた。

「先輩、私コーヒー持って来ます」

「あ、ありがとう。先に戻ってるね」

昼食後は社内のカフェでコーヒーを貰う。
社員は全ていつでも何度飲んでも無料という素晴らしいシステムのおかげだ。

いつもは先輩と世間話をしながらカフェに寄るのだけれど、丁度先輩の仕事が立て込んでいる様子をここ数日見ていた。
だから少しでも早く仕事に戻って貰おうと。
私が出来るサポートのつもり。

アイスコーヒーを二個手にして色んなスタッフの間を抜ける。

「久しぶり」