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何でここに？と考える方がおかしい。
彼等にとってもここが職場なのだ。
そりゃあすれ違ったりこういう事もなくはないだろう。
けどもーーー
「、帰るの少し遅いですよね？」
少し緩めのニットを着ているジミンが話しかけるから無視するわけにもいかず'はい'とニットの有名ブランドのロゴを見ながら答えた。
「やっぱり。事務の人達はほとんど退勤時間に帰るのにって思って」
「、あー…私はまだ、他の人達みたいに仕事が終わらなくて」
階数が下がるのがやけに遅い、気がした。
そんなの完全に私の勘違いだと分かっていてもだ。
私が返答に困る回答をしたからかジミンはただ'あぁ'と頷いただけで会話が途切れる。
そしてエレベーターが止まって目的の1階に。
'じゃあ'と挨拶をして別れる気満々で。
いやそうとしか思っていなかったのだ。
だからエレベーターのドアが開いて降りる時に足音が多くて完全に不意を突かれた。
「Aさんって何歳なんですか？見たままだと…俺と同じくらいか下に見えるんですけど」
私が去り際の台詞を言えなくなったかわりに同じ方向に付いて歩くジミンが話を続けている。
同じ歩幅で隣にジミンが。
このまま歩き続けても私は構わないがもう少し離れた先にはこの会社の出入口の自動ドアがある。
まさかそこから並んで外に出るなんて…ダメに決まってる。
「、95年生まれです、ていうかあのジミンさん」
私が足を止めるとジミンの足も、止まった。
「、私もう帰るところなので、そのー…地下鉄で。それで駅に行かなきゃいけないんで、もう行きますね」
自動ドアの方を指差す。
私の指を一瞬だけ目で追いかけたジミンの髪とピアスが揺れた。
'じゃあ'とエレベーターで言えなかったそれを言って頭を下げて歩き出せば今度こそ足音は私の物だけ。
「Aー！」
突然ロビーに反響した声が自分の名前で安堵しきっていた私は思わず首を竦めて立ち止まる。
ジミンの声だと瞬間的に理解は出来たものの、ジミンのその行動は理解できない。
振り向かなければいいのだろうけれど、名前を呼ばれてそうしない人など殆どいないだろう。
そのままの態勢で振り向いた私にジミンが手を振っている。
「やっぱり同い年だから敬語やめるー！」
それだけの為に？
今度ははっきり'また'と声に出したジミンが私に背中を向けてエレベーターに乗り込んだ。
エレベーターに？また？
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作者名：かむ
| 作成日時：2024年2月14日 10時
