月に叢雲花に風 (ページ47)

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"何"が始まるかなんて。
ただジミンが妖しく笑ってもう一度髪をかき上げた時、その首筋があまりにも綺麗で－－－

ジミンが身体ごと私に覆い被さった時、今まで静かだった部屋に賑やかな機械音が鳴り響いた。

「ちょっと待ってて」

ジミンが離れると一気に空気が涼しくなった気がした。
パソコンの横、そこにあったジミンの携帯の着信音はジミンが手にしても鳴り止まない。

ソファに寝そべったままでは居られる訳もなく、とりあえず多少乱れた髪を整いながらそこに座る。
'待ってて'ジミンはもう一度そう私に言うと床に脱ぎ捨てられていたニットと携帯を片手に部屋を出た。

そして静かな部屋で徐々に頭が冷えていく。

そういえばジョングクを待たせている事。
それからジミンの事が好きとはいえキスより先の事まであっさり受け入れ態勢だった自分の事。
ジミンを好きになって"辞めさせられた"スタッフがいる事。

「A、あのさぁ…」

ニットを再び見に纏うジミンが戻って来たのだけれど、その表情はさっきと一変。
いやむしろ声色もだ。

'悪いんだけど'と聞いた事もそうだが、さっきよりは少し頭が正常だからかソファからすぐに立ち上がった。

「俺、今からすぐ出なきゃいけなくなっちゃった、」

「、そうなんだ、じゃあ…私はジョングギの所に一旦戻ろうかな」

'ごめん'なんて言わたらどうしようかと思った。
だって事が事だから'大丈夫'って言うのもおかしいし、'また今度'なんてもっと言えないし。

髪をまた直しながらドアに向かう時ピアスに手が当たって瞬間、鈍痛が走った。

「あ、A」

部屋から一歩出た私と部屋の中にいるジミン。
また私の袖を掴んで引き留めた。

「今度は俺の家にでも来てよ」

'ん？'と首を傾げて微笑んだジミンが'またね'と言って手を振りながらドアを閉めた。

静かな通路は今度は一人で歩く。
夢から覚めたみたいに通路は少し肌寒く感じた。