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ジミンの目が私の唇を見てるって分かる。
自意識過剰じゃない。
私の唇がどう動くのか待ってるのか、何を言ってくるのか期待してるみたいに。
だから余計に口を開けなくてただ跳ね上がる心音とジミンの目に集中するしかなくなる。
「さっきの話なんだけど」
口を開いたジミンの目が私の目に戻る。
汗は引いたはずなのに背中にじんわり汗が滲んでるのが分かる。
「さっきの、話し?」
「そう、ジョングギがAにピアス開けるとか、その話」
決して綺麗とは言い難い床に膝を付けたままの状態でジミンは話しを続ける。
前髪をかき上げたジミンの手が私の座るパイプ椅子の背もたれを掴んで椅子が軽く軋む。
「ちょっとやだったなと思って」
私ではない何処かを見ながらそう呟いたジミンの横顔に思わず'え?'と漏らしてしまった。
「だから、知らない所でジョングギと約束しててなんかちょっとやだなって思ったってこと」
勢いをつけて私に振り向いたジミンは形の良い平行眉の間に少し皺を寄せていて。
そう言った後でわざとらしい咳払いをした。
ジミンからの絵に描いたような嫉妬の言葉とその態度を見て舞い上がらない人などこの世に存在するのだろうか。
さっきまでの事など簡単に打ち消してしまうジミンが少し怖いのにまた落ちる気がした。
折角セットした髪を容赦なくかき上げたジミンはやっと立ち上がると床について膝を軽く手で払った。
そしてから座ったままの私を見下ろして口角を少し上げて微笑む。
そして'まぁ…'と何か言いかけて中途半端な伸びかけの私の髪を少しだけ手に取って掴んだ。
「耳は許すよ、でもダメだよ、口は」
ジミンの目が私の顔をまたなぞる。
ジミンの声が響いて頭の中で響く。
ジミンの匂いが意識を奪う。
自分の心臓の音がもはや警鐘に聞こえる。
色んな物が蘇っては頭の中を物凄いスピードで駆け巡っては消えてを繰り返す。
'約束ね'そう残して私の髪を離したジミンの背中に苦しくなる。
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作者名:かむ | 作成日時:2024年2月14日 10時