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小走りで駆けて行ったジミンの元にいたのは先輩と同じ長い髪のスタッフだ。
メイクのスタッフか衣装のスタッフかそれとも全く別の役割のスタッフなのか、私には分からない事。
でも近付いて来たジミンの背中を親しげに少し強めに叩いて、それをジミンがわざと大袈裟に痛がって見せて、そのスタッフの左肩にジミンの手が乗って。
仲の良さが窺える。
ジョングクと仲が良い、それと同じ感じに見える。
心の中に生じた焦燥感に対する術がないまま、親しげにこのスタジオから出て行ったジミンとスタッフを見ていた。
シルバーの指輪が何個も光るジミンの白い手。
さっきは私の肩にあったのに。
「ヌナ」
目の前をジミンとは別の手が何度か横切った。
「顔に書いてあるよ」
隣のジョングクが私の顔をまじまじと見て言った。
私の両頬辺りだ。
「、何…が？」
「ジミニヒョンのことが、好き、って」
喉の奥に急に熱いモノが込み上げる。
心臓の鼓動が速いというよりも大きくなって、全身を揺らしてるみたいだ。
「…、そんな事書いてないでしょ」
呆れた表情を作ってジョングクの大きな肩をわざと拳で少し強めに殴った。
さっきのジミンと違って大袈裟な演技もしないジョングクはただそこをタトゥーまみれの手で押さえて無邪気に笑った。
仕事をしよう。
ジミンとかジョングクとかじゃない。
仕事をしに来ただけ。
悪戯を楽しむ様なジョングクを横目にバインダーに目を落として捲る。
「別に好きでもいいんじゃない」
声のトーンを落としたジョングクの言葉がバインダーの視力を捲る私の手を止めた。
「ヌナが"気をつけて"そうなったのなら」
'
私の肩を二回軽く叩いたジョングクはその言葉を残して立ち去った。
ジョングクの表情はどんなだったのか。
最後までバインダーを見ていた私には見当もつかない。
でも声色は酷く冷たく呆れてる様に感じた。
考え過ぎだ、全部。
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作者名：かむ
| 作成日時：2024年2月14日 10時
