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"なんでないと思うの"
ジョングクの言葉が頭の中で過った。
でもその時にはもう既に遅くて、椅子だけが一回ガタンと大きな音を立てた直後、ジミンの両手は私の頭をしっかりと捕まえてしまっていた。
何が起きてるのかも分からない。
混乱。
なのにジミンの肩を掴んで拒む気があるのかないのか。
ジミンの片方の手が頭からするすると動いて私の左耳を撫でた時に反射的に肩を叩いた。
そしてやっとまともな呼吸と明るさを感じて、自分が目を閉じていたと自覚した。
二回目のジョングクの言葉が過ったのはこの時だった。
まずい。
そう思うのに、妖し気に微笑んだジミンが'もう一回'なんて少し掠れた声で名残惜しそうに言うから応えてしまった。
こんな事、駄目に決まってるのに。
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「具合でも悪いの?」
私の顔を覗き込んだ先輩は見るからに"心配"という顔をしている。
「あ…いえ。ちょっと寝不足で」
'すみません'と言いつつデスクの一番下に入れて置いたドリンクタイプの気付け薬を取り出した。
寝不足なのは私の問題であり、私のミスだ。
寝不足になった原因も私だ。
そして、ジミンだ。
気付け薬はだいぶ前に友達から教えてもらった物で実際に飲むのは今日が初めてだった。
「っまず…」
寝不足が吹っ飛ぶ味だった。
悪い意味で、だ。
思わず溢れた感想に先輩が'それまずいよね'と賛同してくれて、私の舌がおかしいわけではないみたいだ。
ある意味効果があったのか寝不足は解消されたが、止めどなく頭の中を駆け巡る昨夜の出来事を消す効果はない。
昨夜寝る前からずっとこれでこの有り様なのだ。
こうなっても尚あれは何だったのかと思うし、ジミンのキスを三回も受け入れた自分自身にも何なんだと思う。
ちょっとかっこよくて良い匂いがして仲良くなって心の中で浮ついていたのか。
少し荒々しいジミンの目を思い出すとその時の手の動き、息づかい、ジミンの香水まで鮮明に蘇って心臓が高鳴る。
だから、まずい。
これが一番まずい。
キスより何より。
"気をつけて"
もう遅い。
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作者名:かむ | 作成日時:2024年2月14日 10時