月に叢雲花に風 (ページ3)

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「あ、は…初めまして」

困惑が大き過ぎて私の挨拶はだいぶ遅れた。
情けない挨拶だったがジミンは気にしていないみたいで'はいはい'と頭を下げる。

決して近い距離ではないが突然知らない匂いが鼻を掠めて、それがジミンの髪からなのか香水なのか。
どちらかの一つだとは思うけれど正確な判断は困難だった。

挨拶以外何を言えばいいのか分からないまま、まだ戻らない先輩を目だけで捜す。

「あの」

ジミンの声でそれを止める。

「名前は？」

「あぁ…あー、A、と言います」

「A？あ、もしかして日本の方ですか？」

下の名前だけ言えばそれが容易に伝わる事を知っている。
だからジミンからも予想通りの質問が来て構える事なく'はい'とスムーズに返事ができた。

'あー'と言いながら頷いたジミンは今度こそ何処かに行くのかと思ったのだけれど

「ジョングガー」

行くどころかメンバーを呼び私の前に留まったのだ。
何故？と思いまたすぐに身構えたからか、一歩下がって壁に背中が付く。
硬くて冷たい。

特に躊躇する様子も見せずメンバーの輪の中から呼ばれた本人が小走りで近付いて来る。
少し俯いて顔がよく見えないがそうこうしてるうちに明らかになるのは当然で。

「Aさん、日本の方だってよ」

ジミンの隣に立つと前髪を気にしながらジミンのその言葉にうんうんと小刻みに頷いた。

「、初めまして。」

瞬間的にだけ私を見てすぐ目を逸らしたジョングクの挨拶はジミンとは対照的なものだった。

鼻から笑顔で距離が近いジミンが"人懐っこい"という印象なら、ジョングクは"人見知り"という距離感と表情だ。
軽い笑みは見受けられるものの、目は合わない。

ジミンより控えめなジョングクの態度は勝手に私に近いものを感じた。