月に叢雲花に風 (ページ14)

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「ちょっと気になる事があるんですけど」

ジミンは軽やかに椅子から立ち上がると携帯を持って個室から出て行ってしまった。
ジョングクの二人の空間にやや不安を覚えたが、割とハキハキとした口調でジョングクが沈黙を破ったのだ。

背もたれにしっかり背中を付けたまま、目線は私－－－ではなく香ばしい匂いを放つ良い色に焼けた肉だ。

「何ですか…？」

私だけがジョングクを見ている状態だ。

「、ジミニヒョンには、気をつけて下さいね」

ジョングクの言葉に聞き覚えがない訳がない。
先輩と同じ事をジョングクから聞くとは思っていなかった。
どこから見ても仲が良い、良過ぎるくらいに見えるからだ。

また一つ肉を口に頬張ったジョングクの唇のピアスが揺れている。

「少し前にヌナが一人辞めちゃったんで、だから、まぁ…俺が言うのも変かもしれないですけど」

たった今ジョングクが言った"ヌナ"は私じゃなく先輩の言っていた"スタッフ"だ。
同じグループのメンバーから聞いて自分の中で真実味が増す。
ただ一度聞いていた内容と全く同じだった事で'はい'と素っ気ない返事しか出来なかった。

気をつけろと言われてもどう気をつけろとかもっと具体的にこうなんか言えないもんかな－－－

「ヌナ」

頭の中だけでやや愚痴をこぼしていた私の目の前のテーブルをタトゥーの入った手が二回指で叩いた。
その手はジョングクの物だけれど辿って見れば、珍しく私をしっかり見据えた大きな目がそこにあった。

「ヒョンにエゴマの葉取ってもらったからって、勘違いしないようにって」

しっかり目があってドキッとした自分を呪った。

「いや…、私そんなつもりないんですけど…ていうか、タメ口で話すのやめてもらえます、私年上なんですけど」

「だってさっきヒョンが敬語やめようって言ったじゃん、だから俺もやめる」

「あれはージミンさんと、私が、同い年だからって話しなんですけ…」

わざと険しい顔をしたジョングクが首を振りながら何も持ってない箸も振った。

「ヌナはもうそういう感じじゃないもん、ね？」

何が"ね？"？？
ジミンもジョングクも酔っているのは分かっていたけれど、ジョングクはタチの悪い酔い方だと思った。

言いたい事を言いきったのかジョングクはイヒヒと綺麗な歯を見せて笑っている。
私は面白くないし、酔ってもない。