月に叢雲花に風 (ページ13)

今日:198 hit、昨日:158 hit、合計:81,692 hit

13 ページ13

誰がこれを処理するんだという量の肉。
もう何本空けたか分からない焼酎の瓶。
何本空けたか分からない原因は店員が来る度に空き瓶を片付けてしまったからだ。

とても楽しそうに飲んでは食べて喋る二人と傍観者と化してる私。
時々、肉をつまみながら。

私いる必要あるのか？と思いながらも"帰る"と言う勇気は持ち合わせていないのでこの状態なのだ。

「あーーーA待って」

口直しをしたくてエゴマの葉のキムチにお箸を伸ばした私の肩をジミンが軽く叩く。
微かにアルコールの匂い。

「俺が取ってあげる」

と、自分の箸で薄いエゴマの葉を一枚取って私の取り皿の上に置いた。

韓国で噂の"エゴマの葉論争"が頭を過ぎる。
いやでもあれは恋人同士の話しで私とジミンはそういうのではないし、とすぐに掻き消す。

'ありがとうございます'と受け取ってただそれを口に入れる単純な行動だったのだが、ジミンは何が嬉しいのか？と聞きたくなるような笑顔で私がエゴマの葉を口に入れるまで見ていた。

「…何か、変です？」

思わずその視線に耐えかねて尋ねる。

「ううん、ただ食べたなぁと思って見てただけ」

何だそれは…
返す言葉がなくて口を動かしながら頷く私にジミンが立て続けに'あーいやだからさぁ'と髪をかき上げて。

「Aは俺と同い年なんだから、そうやって敬語使わなくて
いいんだってばぁー」

割と大きめの声で駄々を捏ねる子供のような口調で。
そこまで言って'알았어?(アラッソ?)(分かった？)'と数センチ詰め寄った。
反射的に数センチ身を引く。

ふふっとご機嫌そうに笑ったジミンとは裏腹にジョングクからは何故か深い溜息を吐く音が聞こえた。
思わず私がジョングクの方に目を向けた時、誰かの携帯が鳴り響く。

肉の焼ける音よりダクトが煙を吸い上げる音より大きい音。
ジミンの携帯の着信音だった。