月に叢雲花に風 (ページ12)

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「じゃあ、向こうでまた」

いつから手配していたのか知る由もないが、私をタクシーに乗せて運転手にサムギョプサル店の名前を告げるとそう言って微笑んでドアを閉めた。

その時に有名なブランドのピアスが揺れて、そういえばジョングクの耳にも同じ物が揺れてたなって。
意外と色んな所を見ている事に気付く。

タクシーのおじさんとは特に会話がなくて逆にそれが助かった。
ジミンの事について色々聞かれても困るし、これから待ち受ける状況の前に落ち着いた時間を過ごしたかったからだ。

窓の外の色とりどりのネオンサインや賑わう人々を横目にただタクシーに揺られた。

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どういうルートで来たのか。
ジミンとジョングクは先に店に到着していて、タクシーのドアを開けるともうそこにいた。
夜だというのにジミンは真っ黒なサングラスを掛けていて、ジョングクはアウターのフードを目深に被っていた。

「자～밥 먹자～(ジャ～パプモクチャ～)(さぁ、ご飯食べよう)」

サングラスで覆われた目元は分からないものの、そう言ったジミンの口元はしっかりと笑みを浮かべている。
ジョングクはジミンの前を歩いて店員に"三人"と告げたところだ。

店内にあるテーブルのあちこちからは煙が上がり、店内にも肉の焼ける匂いが充満している。
その殆どのテーブルの上にはよく見るオーソドックスな焼酎の緑色の瓶。
会話に夢中なのか食事に夢中なのか、自分のすぐ隣を歩くジミンとジョングクの存在に気を止める人はいない。

「こちらにどうぞ」

普通より少し良い店なのだろう。
店員達がしっかりした制服に身を包んでいるだけじゃなくて、私達三人を個室に通した。

私達が座る前に店員が一礼の後、ドアを閉めて出て行った。

「あー本当お腹空いた」

「何人前頼む？とりあえず三人分？」

「あーいやヒョン、五人分」

さっさと上着を脱いでさっさと椅子に座ってもうメニューを選ぶ二人を見ているだけの私はまだ座ってもない。

「はい、座って」

サングラスをテーブルの隅に置いたジミンが自分の横の席を引いて言うからそこに座る。
向かいのジョングクとはやっぱり目が合わない。