それでも、君と一緒に (ページ29)

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「A起きれる？」
「...うん」

ベッド脇のサイドテーブルにマグカップが2つ並ぶ。

毛布にくるまったまま、モゾモゾと起き上がりベッドのへりに座った奨君にぴったりと引っ付いて座る。

熱いから気を付けてと手渡されたカップは、気にかけていた程熱くはなく、じんわりと手に温かさを移してくれた。
1口ココアを口に含むと、カップと同じ温度で優しく、ゆっくり温めてくれる。その柔らかさに心なしかお腹の痛みも解れていくような気がした。

「ほんとにごめんね」
「なんでAが謝るの？何も悪いことしてないよ」
「だってせっかくの記念日...」

台無しにした、
と言いかけて、言葉が詰まる。
さっきまで頑張って締めていたはずの涙腺がくるくると蛇口を捻るように緩まって、ゆっくりと涙が零れる。

今日は本当にタイミングが悪い。

泣きたくないと思っても1度緩んだ蛇口からは永遠と言葉に出来なかった感情が溢れてくる。

見かけた奨君がゆっくり背中に手を回し、子供をあやす様に一定のリズムで私の呼吸を整えてくれた。

「俺はAと居れればそれで嬉しいんだよ」
「今は自分を責めちゃうかもしれないけど、たまにはこうやってゆっくり家で過ごすのもいいじゃん？」
「いっつもAが頑張ってるの知ってるしさ、たまには弱い所出したっていいんだよ。

Aは...俺に見せたくないって思ってるかもしれないけど、人間だもん。
俺はそれもひっくるめてAの事が好きだよ。」

「奨君とのお出かけ楽しみにしてたのに...記念日だからおしゃれして奨君に1番可愛い姿見てもらいたかったのに...全部台無しになっちゃったし...その上お世話までしてもらってるのに...我儘言っちゃうし...」

「うん、うん」

奨君の腕の中はいつも温かい。今日は特に温かい。
そのまま涙が止まるまで、背中に柔らかい振動を受けながら普段言えないことを1つ、2つと呟いた。