それでも、君と一緒に (ページ22)

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…かわいい？
何かの聞き間違いかと思ったけど、いつもの笑顔でさらっとそんなことを言う豆ちゃん。
でもなんだかそれだけに反応するのは違う気がして、つい笑って聞き流してしまった。

「豆ちゃんこそ疲れてない？いっぱい歩いたし」
「僕は大丈夫です！」
「そっか、ならよかった」

さっき運ばれてきたカフェラテを喉に通すと、ひんやりとした感覚が火照った体と緊張した頭を少しだけ冷ましてくれた。
他愛のない話をしているとお昼代わりのパンケーキも運ばれてきて、二人の間もいつも家で話しているような空気感に戻り、ちょっと安心していた。
していたのに。
パンケーキを食べ進めていた豆ちゃんと目が合って、

「Aさん、僕今日実はちょっと嘘をついていたんです」

すこし真面目な顔でそう言われた。

「どしたの急に」
「本当はAさんとデートしたかったんです」
「えっ？」

飲んだカフェラテを危うく吹き出しそうになった。
思いもよらない方向から攻撃を受けて豆ちゃんの顔を二度見する。
恥かしさを含んだ柔らかくふにゃっとした笑顔に心臓が大きな音を立てだした。

「裕太の誕プレを選びたかったっていうのは本当なんですけど、僕は今日Aさんと一緒に出掛ける方が楽しみで…」

デート、楽しみ、私と一緒に、
そんなの、いくら恋愛経験の薄い女だってその意味に辿りついてしまう。

でも、豆ちゃんは弟の大事な友達だし、なによりこんな引きこもり年上の女より、同世代のもっと可愛らしい社交性のある女の子が周りにいるはず。
笑顔が素敵で気配りが出来て主人公みたいなこの子にそんな気持ちを抱いてしまうのは少し違う気がした。
だから気が付かなかったことにした。