それでも、君と一緒に (ページ20)

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本気に翻弄されて：Issei ページ20

いつだって、運命というのは目の前に転がっているもので。
それを拾うのも捨てるのも自分の選択肢次第である。

今、私は人生最大の分岐点に立たされている。いや正しくは立たされた。

選択肢を投げつけてきたのは、机を挟んでニコニコとこちらに目線を送ってくる男の子。
豆原一成君。私より五つ年下の男の子。

「で、Aさんどうしますか」
「どう、って言われましても…」
「僕は本気です。」

そんな屈託のない太陽みたいな笑顔で見られても困る。
何故、こんな状況になってしまったのか。それは半年ほど前に遡る。

――――

「姉ちゃんただいま～」

私には五つ年下の弟がいる。名前は裕太。今年から大学生になり、忙しい毎日を過ごしているようだ。
たまたま進学先が実家より私の1人暮らしする家の方が近かったため、面倒を見るついでに二人暮らしをしている。

「おかえり～」
「ねぇ、友達も一緒なんだけど、上げていい？」
「全然構わないけど、そういうのはちゃんと前もっていってよね～」
「ごめんごめん、今度姉ちゃんの好きなケーキ買ってくるからさっ」

ペロっと下を出して両手を合わせる。年が少し離れているのもあってなんだかんだ甘やかしてしまうのは長女の悪い癖である。

「まめちゃん！お待たせ、入っていいよ～」

弟が扉を開けるとまめちゃん、と呼ばれるお友達が顔をひょこっと覗かせた。
くりくりと丸い目、少し緊張した面持ちで入ってきたかと思えば、私の姿を捉えるなりキラッキラの笑顔でお辞儀をした。

「初めまして、豆原一成といいます！」
「初めまして、弟がいつもお世話になってます。」
「こちらこそです！急にお邪魔してすみません」
「全然！ゆっくりしてってね〜！」

豆原くん、もとい豆ちゃんの第一印象は「犬」だった。
人をなにかに別のものに例えるというのはあまり好きではないのだが、顔立ちや弟と遊んでいる時の姿がまるでわんちゃんそのものだった。
なんだかこう、頭をわしゃわしゃっとしたくなるような。

流石に初対面でそれはいくらなんでも引かれてしまうのでそっと心に閉まっておいた。
2人はリビングでゲームに夢中。
その様子で本当に仲が良いのが伝わってきて、思わず口角が上がる。

弟よ、良い友達を持ったな。