それでも、君と一緒に (ページ17)

今日:73 hit、昨日:32 hit、合計:72,774 hit

〇ページ17

「あれ、A髪伸ばしてんの？」

ある日の部活中、同級生から飛んできた言葉に少しだけ驚いた。
なんだか悪い事をコソコソとして咎められるような気分。

いや実際悪い事は何もしていない。
ただ、あの日瑠姫の言ったことが忘れられず、いつもなら邪魔だ、と言って切る髪の毛が今は首元をくすぐっている。

「なんとなく。今回はちょっと切るの待とうかなって」
「なんか新鮮でいいね〜まぁもうちょっとで引退だしね」

自分があまりにも素直な上に単純で、少し笑ってしまう。
瑠姫が何気なく放った一言をここまで鵜呑みにしている。
もしかしたら、社交辞令で表向きはそう言ってるだけであって、別に髪型とかそういったものは別にあるのかもしれないのに。

まぁでも実際、部活のために髪を切っていたから、引退すると短くする必要は無くなる。
季節は夏。夏が終わるまでに鬱陶しくなるほど伸びることはまず無いだろうから、引退を1つの理由として持っておくことにした。

「Aずっとショートだったもんね。なんか好きな人でも出来たのかと思っちゃった。」

「私そんなわかりやすい事しないよ」

「そうだよねぇ。A落ち着いてるし、浮いた話ないよね〜彼氏作らないの？」

「今は別にいらないかな」

「好きなタイプとかないの？」

「好きなタイプか…よく喋る人、かな」

なにそれーって友達は眉毛を八の字にしてケタケタ笑ってたけど、瑠姫とバレずに瑠姫を形容するならこれしかないと思った。
ある程度仲良くないとあのお喋りは顔出さないから。

ｰｰｰｰｰｰｰｰｰ

その日の帰り道、肩を軽く2回叩かれた。
振り向くと、部活帰りのはずなのに爽やかで疲れを感じさせない王子がいた。

「わっ、めずらし。瑠姫だ」
「今日は終わるの遅かったせい」
「大会前だからしょうがないよね」

帰り道の数十分、いつものテンポで会話が続きあっという間に駅に着く。
降りる駅は同じだけど、家は最寄り駅から違う方向になっちゃうから、ちょっとだけ惜しい気持ち。