凡才なので。2【ハイキュー】

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「紕波さーん!!」



そう、声が聞こえたので僕は反射的に渡り廊下の壁に身を隠した。

無意味だって？そんなこと分かってるけどしょうがないじゃないか。

日向くんがいる。

イコール、影山くんもいるってことなんだよ。

あそこは僕的にセットのイメージだから、つまり終わりだ。



「あれ、紕波さん何で隠れたんですか？
……あそれより！さっきの！」

『き、今日も元気だね、日向くん……』



日向くんがしゃがみこむ僕を上から覗いてくる。

それは日向くん単体で、影山くんの姿は僕からは見えない。



『さっきの………って、何？』



それよりも、今はこれだ。

数年ぶりのジャンプサーブ。

誰もいないと思ってたのに、まさか見られてたとは。



「ジャンプサーブ!めっちゃ綺麗でした!
紕波さんのああいうサーブって初めて見ました!!」

『そ、そう…………。』

「どこで練習したんすか!?」



………キラキラした嘘偽りのない純粋な瞳でこちらを見上げる日向くんを見て、少し罪悪感が湧いた。

心の中でごめんなさい、と小さく謝っておいた。



『………練習………は、別に。あんまりやった事ない。

中学……の、最初の頃に猛練習したけど、それからはずっとやってない。今のは、お試し的な？』

「すげー!!!」



これは本当だ。嘘は何一つついていない。

でも、多分、どう言っても何かしらのことは言われるんだろうな、と嘆いた。

それは逃れられない現実なんだ。



「中学1年、最初の公式戦。第2セット目初めのサーブ。
………っすよね。」



ぶわりと鳥肌が立った。

とてつもない嫌悪感を感じ、脳が警報を鳴らしている感覚だった。



「俺、見てました。アンタのサービスエース。」



後ろから聞こえる、影山くんの至極落ち着いていて、僅かに苛立ちを含んだその声が僕に刺さった。

全てのピースが、パズルのように繋がった気がした。



『へぇ、そうなの………。』

「俺は、確かにサーブとブロックは及川さんを見て覚えました。

でも。俺が憧れたのはアンタのあのサーブです。

手抜きしないで、本気でちゃんと………もう1回、あのジャンプサーブを試合で見せてください。」



だから、この子は僕に著しく突っかかっていたのか。

僕の手抜きをあんなにも咎めたのか。


中学2年からの、今までの2年と少し。

この子の、僕の“本気”に執着する理由がわかった気がした。





………でも




『僕レギュラーじゃないし。
それにもう、あんなこと出来るわけない。』

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