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「日向に、いつもより少しだけ柔めのトス出してやれ。
いつものダイレクトデリバリーじゃなく__」
「インダイレクトデリバリー………」
インダイレクトデリバリーとは、直線的な起動を描かないふんわりとしたトスのことをいうらしい。
僕はセッターじゃないからそこら辺あまり詳しくは無いが。
「いきなり変えろって言われても難しいかもしんねえけど……。」
「やります。」
__________
____
「初めてのプレーをすぐできないのなんて当然だ。……でも。
どんなことだって、“やってみる”から始まるんだ。
チビで下手くそで単細胞でも、なんかうちのじーさんが言ってたことを思い出す。
名前のまんまだけど、身長は170cmそこそこで、最初はブロックに止められてばっかだった。
それが2年の後半には、空中戦で右に出る奴はいなくなった。
ブロックの高さに敵わないなら、その隙間を狙って打つ……
そうやって、小柄な自分の戦える道を作っていったんだ。
………うちのじいさんがそいつについて言ってたことを、すげーよく覚えてる。」
____“翼”が無いから、人は飛び方を探すのだ。
その瞬間、日向くんがブロックを避けてスパイクを打った。
残念ながらアウトだったが、
小さな巨人………さながらの、高い跳躍と鋭いスパイクだった。
…………すごいなぁ、あの2人。
いつものように嫉妬なんて湧かない。ただただ感心した。
だが、当然と言うべきなのだろうか、このセットも、制したのは音駒高校だった。
『……研磨。』
ネット際にいるみんなの元に取り敢えず駆け寄ってみたが、それ以上に研磨に興味があった。
ネットを超えた向こう側に入る。
名前を呼ぶと、研磨は目を見開いてこちらを向いてくれた。
「………あ、十和。お疲れ様。」
『うん……僕何もしてないけど。』
コート外から脳内で実況してただけ。
皆と違って疲れてない、汗もかいてない。
だから、ここには少しだけ居づらかった。
『…………すごいね、研磨。』
「ありがと」なんて、小さな声で言ったのが聞こえたが、言葉の終わりかけに、
「もう1回!!」
日向くんがこう叫んだ。
研磨のか細いお礼の声は掻き消された。
僕は研磨に緩く手を振り、空気を読んで烏野側に戻る。
「おう、そのつもりだ!
“もう1回”が有り得るのが練習試合だからな。」
そして、2回戦が始まる。
僕は、また、さっきのようにコートを出た。
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ほし(プロフ) - あいさん» コメントありがとうございます〜!(*´˘`*)♡お気遣い嬉しいです!こちらこそ、今後とも当作品をよろしくお願いいたします!_(._.)_ (4月16日 20時) (レス) @page32 id: 28a3212d82 (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - 初めまして!思いきってコメント失礼します!!この神作に出会ってしばらく経ちますが、ほんとにめちゃめちゃ面白いです…!学業もあるということなので、色々忙しいかと思いますが無理せず更新頑張ってください!これからも応援しています!! (4月15日 17時) (レス) @page32 id: cd5bbf6078 (このIDを非表示/違反報告)
ほし(プロフ) - あおいさん» コメントありがとうございます!勿論、及川さんとの絡みはこれからも深堀して盛り込んでいくつもりです……!少し待っていただければ幸いです! (4月14日 21時) (レス) id: 28a3212d82 (このIDを非表示/違反報告)
ほし(プロフ) - まなみさん» コメントありがとうございます〜!研磨との絡みはプライベートの話や合宿、ゴ決などで出そうと思ってます!研磨の出番かなり多くなると思うので楽しみにしていただければと思います……! (4月14日 21時) (レス) @page32 id: 28a3212d82 (このIDを非表示/違反報告)
あおい - コメント失礼します。十和くんが本気を出すの楽しみです(。•̀ᴗ-)✧できれば及川さんとの絡みが見てみたいです〜!これからも応援してます!!お体に気をつけて更新頑張ってください☺ (4月14日 20時) (レス) id: 63ae223e49 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ほし | 作成日時:2024年3月21日 22時