凡才なので。2【ハイキュー】

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5月6日、AM 8:50

烏野総合運動公園 球技場




「集合!!」



今日は合宿最終日だ。

つまり………音駒高校練習試合、当日。



『(………研磨。)』



久し振りにこんなに心が踊る。

昨日までの憂鬱な気持ちと後ろ向きな感情が少しだけ晴れた気がする。

………僕はスタメンでもなんでもないけど。

でも、ようやく……友達と会えることが、嬉しかった。



「「「「挨拶!お願いしアス!!」」」」

「「「「しアース!!!」」」」



赤いジャージ。

背中に記される“NEKOMA”の文字。

…………他と比べれば少し背が低い、僕と同じくらいの身長。

プリンのようなツートンの髪の毛。



『…………、』



自分の口角がゆっくりと上がっていくのがわかった。

満たなかったものが満たされてゆく感覚がした。

多分、人はこれを“高揚”と呼ぶのだろうと思った。



『研磨。』



研磨は可哀想なことに日向くんと田中くんに絡まれていた。

そして向こうの喧嘩腰な人と田中くんがガン飛ばし合う。

数分後、その面倒な絡みが一段落したところで僕は彼の名前を呼んだ。



「君、さっきの。


…………あれ、もしかして十和？」



初めは、“路地で顔を見た人”という認識だったらしい。

確かに先程のロードワーク中にお互いに顔を見たのは確かだ。

でも、数秒後、そのネコのような瞳が大きく見開かれた。



『……うん。

烏野高校排球部………の、紕波十和………です。

えと、初め、まして………？』



不慣れで不格好な自己紹介。

滑稽なものであったはずだが、研磨は浅く頷いてくれた。



「………こちらこそ、初めまして。

音駒の孤爪、研磨。改めてよろしく………十和。」



こう顔を合わせると変な感じがする。

知り合いの筈なのに、全くの初対面な感じがした。

印象と違ったとかそんなじゃない。ただ、思ったより緊張したというだけ。



『……はは、変な感じする。初めましてじゃないのに。』

「うん………バレー部だって聞いてたから、もっと大きいのかと思ってた。」

『うっさい……それこっちのセリフ。』

「………何cm？身長」

『……………168。』

「おれ169。」

『う………性格悪いよ、研磨………。』



でも、何となくしっくりきた。

変な感じはやっぱりするけど、話していて気持ちが軽くて心地がいい。

…………僕らは共通点が多いから。

いつも詰まっている言葉を、不思議とすらすら発することができたような気がした。

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