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「え………、」
小雨は何が起きたか理解していなかった。
突如として聞こえたその声、
瞬間、跡形もなく塵ともならず消え去ったその男、
そして、その代わりと言わんばかりに地面に軽やかに降りた、見覚えのある人物。
影でよく分からないが、色素の薄い風貌をした、チb……小柄で華奢な男だった。
『……ここどこだか分かってる？暇なの？』
「いや、なにやってんの、はこっちのセリフ……湊瀬さん……」
輪廻は、手をパンパンと叩くように払って、小雨をジト目で見た。
心底呆れたようなその目つきに、小雨はどことなく腹の底に煮えたぎるものを感じた。
だが、沸点が低い小雨には目もくれず、輪廻は残りの1人の男に視線を移した。
『……君、呪詛師でしょ。
小学生女児の体の一部を売買してるっていう。』
「え……、」
『小雨は黙ってて。
……今さ、他の術師と、君のこと追ってたんだよね。
至急来てもらうから、大人しくしてもらってていい？』
ピシャリと言葉を断ち切られた小雨が不服そうに輪廻の顔を伺った。
「……お前、去年呪術師に寝返った、人を消す………」
『大人しくしててって言ったよね。この男みたいに消されたいの？』
空気が凍るほど感情が籠ってない声が、狭い路地裏に反響した。
ぴちょん、と水の滴る音だけがその場で鳴っていた。
『……あ、もしもし？＿＿さん？ターゲットいた。片方消したけど、まだ5分経ってないから再生できるよ。
来れる？………りょーかい、抑えとくね。』
輪廻はそう言うと、先程男を消した地面に触れ、呪力を流し込む。
一定の量を流し込むと、その地面からさっき消した男がもう一度現れた。いや、“戻った”。
なにがなんだかわからない、と言ったように小雨は首を傾げてその一部始終を眺めていた。
『……見た？』
「もう、そりゃ、全部。」
輪廻が1つ、ため息をついた。
『…………見なかったことに、』
「なると、でも？」
『……だよねー……』
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作者名：ほし | 作成日時：2024年2月14日 22時
