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俄雨の会遇 ページ14

「………ここ、?」



伏黒小雨は、スマートフォンに表示されるマップと現在地を懸命に見比べながら首を傾げた。

オシャレそうなカフェがスマートフォンにはあるものの、目の前の場所はとてもそうとは思えぬ暗い路地裏であった。



「(……絶対、違う。)」



今流行りのふわふわで写真映えするパンケーキ。
それが食べたくて、わざわざ仙台の都市部まで出てきた小雨だったが、どうやら目的地には辿り着かなかったようだ。

目の前は暗い路地、
オシャレなカフェの面影はどこにも見当たらなかった。

はぁ、と溜息をつき、くるりと踵を返して帰ろうとしたのはいいものの。



「……あれ、帰り道、どっちだったっけ。」



二手に分かれている道に困惑し、小雨は立ち止まった。



「…………。まぁ何とか、なる、でしょ。
何か、あったら宮城高専の人、呼べばいいし。」



小雨は、もう諦めて適当に選んだ方をズカズカと進み出した。
そりゃもう、一切の躊躇も無く。

だって宮城高専には特級も、1級も、受肉体も、元呪詛師も、何でも揃っている。
困った時に呼べば彼らが何とかして片付けてくれるだろう。そう思った。


だが、そう思ったのも束の間だ。
都会は怖いものである。



「あれ?お嬢ちゃん今1人〜?」

「小学生だよね?迷っちゃったかな?」



小雨の前には、見知らぬガタイのいい男2人が立ちはだかっていた。

うわ、やらかした。

若干脅える気持ちを押さえ込んで、小雨はそう思った。



「………別、に、迷って……ない、です。」

「ほんとかなぁ〜?目が泳いでるよ〜?」

「お兄さん達が案内してあげるから、こっちにおいで〜」



じりじりと逃げるように引き下がる。

小雨も、体術は一応習っているものの、こう大人のガタイのいい男に絡まれては萎縮してしまった。
なるべく穏便に済ませたかった。



「……でも、私、1人で帰れる……ので。
(……誰かに電話……でも、掛ける隙が……、)」

「強がんなくていいよ〜、ほら一緒に行こう。」

「ちょ、やめて……!」



男が、ぐい、と小雨の華奢な腕を強引に引っ張る。

精一杯抵抗するが、それも虚しく一方的に引っ張られるばかりだ。



「ちが、やめ、……やめて!」








『………何やってんの?』



刹那、絶対零度の声と共に、その男の姿は一瞬にして消えた。

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作者名:ほし | 作成日時:2024年2月14日 22時

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