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融佑は、彼の父親については、“呪詛師”であるということしか知らない。
だから重ねられたことも、同類にされたことも不快だった。
「全く……何考エテルカ分かんナイ人ですネ。」
『でも、感情豊かな方ではあるんだよ。』
「トテモそうには見えマセンけど……ソウイウことにシとこ。」
だが、輪廻がまがいなりにも“今は”比較的善人にも見えることを鑑みると、彼の親も丸っきりの悪人ではなかったのだろう。
輪廻も、呪詛師としての顔ではなく、こちらの年相応な顔の方が素なのだろう。
なんて少しばかり思ったりもした。
『……聲が、姿が、懐かしかった。
僕が言いたかったのは、それだけのことだから。』
「フーン、“聲が”ねェ………。ほとんど親ト会ったコト無いノニ何でソンナニ思い出せるンデスか?」
『……一応、血は繋がってるから。結末は最悪だったけど、僕は意外と愛されて育ったみたいだし。』
「ソウミタイデスネ……」
だがやはりまだ良い気はしない。
彼にとって親がどれだけ大きな存在だったかは知らないが、それすら融佑は何も興味がなかった。
何でかって、何があっても彼らは“呪詛師だった”からだ。
『過去は変えられない。だけど……、今とか、未来を見つめることはできる。
僕は、前も言ったけど……ここでできることはなんでもして、自分が犯した罪を祓って……、いつか、胸を張って生きたいんだ。』
今度は、手元を見つめていた顔をパッと上げて、融佑の方を見る。
“不服そうな顔だ”と思った。
『だから……改めてよろしくね、融佑くん。
先輩……には見れないか、僕弱いし。でも、いつか君の話も聞いてみたいな。』
「多分、ソンナ日は来ないト思うんデスケド。」
『………別にいいよ、全部僕の自己満。
でも、話を聞いてくれたお礼。今度何でもするね。』
なるほど、意外と義理堅いのか、この人。
失礼なことを考えたが、輪廻は微塵も気付いていないようであった。
「マジ?じゃあ今度激辛奢ッテくだサイ。」
『激辛……?そんなんでいいの?』
「ハイ。」
『わかったよ、じゃあ今度行こっか。』
またもや苦笑する。
続けて笑顔を見せられ気まずくなり、調子が狂ったように融佑はそれから目を逸らした。
対し輪廻は、目を逸らされ心外そうに目を見開いた。
『……生意気だねぇ。』
「ソーイウ性格なもんデ。」
『全く……可愛げのない後輩。』
そして、懐かしい聲にふっと目を細めた。
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作者名:ほし | 作成日時:2024年2月14日 22時