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“お話”という名の誘いを断るに断りきれなかった融佑は、内心気味悪いと思いながらも輪廻の隣に座った。
『そんなに身構えなくてもいいよ。』
「………イヤ、そんナコト言わレマシテモ……」
『別に………何もしないよ。言ったじゃん、ただのお話。』
「ア、カン違いされテルよウデスガ、怖クハ無いですヨ。
チビの先輩ジャオレヲドウするコトもデキナさそうデスシ。」
煽るようでもなく、至極当然のようにそう言った融佑に、輪廻は怒ることなくただ1つため息をついた。
そして、缶コーラの開け口に手を添え、プルタブをカシュ、と開けた。
………白く細い、とても元呪詛師の男子高校生とは思えないような指。
融佑は、素直に、やっぱり“見た目だけなら”女子みたいだと再度思った。そう、“見た目だけなら”。
「………デ、オ話って何ですカ？」
コーラに口をつける輪廻のその隣で、融佑はその顔を下から覗き込んだ。
輪廻は1度、一瞬だけ視線をちらりと融佑に送る。
心地良い炭酸が弾ける音が喉で鳴っていた。
『……まぁ、それといった話なんてないんだけどね、ちょっと、君と会った時のこと思い出したから。』
酷く優しそうな目で手元を見つめる輪廻に、融佑は少しばかり拍子抜けした。
「(………あ、そっか。)」
…………そういえば、自分がこの人と初めて会ったのは………、
この人の両親の命日だったっけ。
なんて、融佑は頭の隅で微かな記憶を想起させた。
『そしたら……何となく、引き止めたくなっちゃって。』
「……そうイウモンですカ？」
『知らない。感覚的だし。』
「無責任デスね……、チャント理由くらいアルのかと思ッタら。」
輪廻は融佑のあきれ声に対してまたもや何も返さなかった。
紡ぐ言葉も短く、無駄はひとつもなく簡潔。輪廻の言葉は、ダラダラ話す人に比べては幾分かわかりやすいはずだ。
……確かに、話の内容は分かりやすかった。
だが、“気持ち”が上手く読み取れなかった。
「先輩ッテ、全然表情変えマセんよネ。」
『……そう？感情豊かな方じゃない？』
「どの口ガ言ってるんデスカ………。」
またもやあきれる融佑に、輪廻は、“よく人に呆れる子だな”と感じた。
それが自分のせいであることは露知らず。
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作者名：ほし | 作成日時：2024年2月14日 22時
