磁石みたいな恋【あほの坂田。】 (ページ5)

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いらページ5

「一緒に帰らへん？」

毎日聞いたこの言葉も、今日で終わりかもしれない。そう思うと、『プレゼント』なんてしない方が良いと思ってしまう。

こんなに坂田の事考えるのが楽しいと思うのも、最後かもしれない。

「うん、帰ろ」

「え？」

毎日断っていたせいで了承したらビックリさせたっぽい。ちょっとカワイイ。

「どしたん、珍しい」

「誕生日プレゼント、用意出来なかったから」

ちょっとだけ嘘だな、コレ。ただどうするか考える時間が少しでも欲しいだけで。

決心する時間が欲しいだけで。

「そんなんいいのに。言ってないんやし」

「転校初日に言ってたでしょ」

「あ、覚えててくれたん？」

思い出すのが遅かったけど。

「……あ」

気付けば例の信号の所まで来ていた。まだ何にも言えていない。「誕生日おめでとう」の一言さえ。

「ね、ねえ」

「ん？なに？」

私の今の気分のせいか、坂田の声が妙に優しく聞こえる。それは、故意か偶然か。

「た、たん」

「え？なんて？」

さっきまで普通に会話してたのに急に難聴になったのか。

マスクを取って、坂田と向き合う形になる。

「……誕生日おめでと」

棒読みになってしまった気がする。「う」が言えてない時点でもうアウト。

「ありがとう」

心底嬉しそうに笑う坂田を見て、決心がついた。

「す……」

言おうとしたのに。

文字通り口を塞がれた。

「俺に言わせてや。こういうのは男が言うモンやろ？」

「……私だって言いたかった」

きっと、プレゼントになった。

私の告白は。

「好き、です」

「……私も、好き」