幸せの形 -追憶編- ページ44
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『 A、いい子にしててね 』
小さい頃の僕には、両親との思い出はないに等しかった。
海外での仕事が多忙な両親は、僕に家政婦を付けるだけで、愛までは置いていってくれなかったからだ。
いつも母は久しぶりに帰ってきたと思えば、僕をめいいっぱい抱きしめて泣いた。
泣きたいのは僕の方なのに。
ごめん、とも、ただいま、とも言わないでただ僕を抱きしめた母は記憶の中よりもずっと痩せ細っていて、幼いながらに「ケンチャナ？」と眉を潜めた。
でも母はまた何も言わないでただ泣いて、ただ微笑んでまた仕事へ行く。
僕をめいいっぱい抱きしめて、沢山額にキスをして、母はその重い扉の向こうへ行ってしまう。
それは、10歳の誕生日も例外ではなかった。
僕ももう、バースデーカードと沢山のプレゼントが届くだけなのに納得していたし。
だけどその日は一通の電話が来た。
「ママ」という文字に受話器に飛びついて「ヨブセヨ！」と嬉しさを隠しきれないまま叫ぶと、予想とは違った声のトーンと泣き声、そして電話の内容に僕は膝から崩れ落ちた。
僕は昔から要領が良くて、大抵のことは苦労することなくこなせた。ただ淡々とした毎日を過ごしていたんだ。それでいいとも思っていた。
良い子にしててね、という母の言葉を忠実に守り、他の子より少し早く大人になった僕に待っていたのは、父の訃報だった。
父の亡骸を見ても、泣きじゃくる母を見てももう、僕は泣かなかった。
いない父、泣いてる母、どれも僕には当たり前のように思えたけど、変に冷静な僕の言葉は母をかえって傷つけるだろうと悟った。
その日から母は精神的な病気になってしまい、今も入院している。
今日は週一回の見舞いの日だったけれど、レッスンで少し遅れてしまった。
スヤスヤと眠る母の手を握り、月を見ながら独り言のように囁く。
「 …母さん、僕ね、」
あの頃の僕には分からなかったことを、今頃になって気がつくときがある。
「 デビューすることになったよ。」
切なくて、もどかしくて、苦しいことのほうが多いその曖昧な感情に、僕らは人生のほとんどを捧げるんだ。
「 …僕なんかが彼らと肩を並べてもいいのか、分からないんだ 」
月明かりに照らされた瞳は、迷いで滲んでいた。
_______．．．
2015.0526
「 Say the name!!」
��SEVENTEEN ��
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密(プロフ) - 月さん» 続編でウォヌさん活躍させますね……ご愛読有難うございました！ (2019年7月14日 2時) (
レス) id: 8c5a211b31 (このIDを非表示/違反報告)
密(プロフ) - ぼくさん» 当人同士の恋愛はグレーを書きつつも考えていなかったので、いつか書いてみたいと思います(笑) (2019年7月14日 2時) (レス) id: 8c5a211b31 (このIDを非表示/違反報告)
月(プロフ) - 素敵なお話でした。どの作品も気になりますが、チョンウォヌをたくさん取り上げてくださるなら、何でも大丈夫ですw (2019年6月29日 2時) (レス) id: 0847684d6a (このIDを非表示/違反報告)
涼 - すごく面白かったです！このお話大好きなので、続編希望です！ (2019年6月28日 23時) (レス) id: fcb8d0fbd3 (このIDを非表示/違反報告)
レオン(プロフ) - 更新、お疲れ様でした。｢Caratが地図になって導く。」とても感動しました。作品に関しては、続編を希望します。 (2019年6月28日 21時) (レス) id: 6d991553f1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：密 | 作成日時：2019年5月13日 23時
