じんわり、ふわり。

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「クリスマスどうしようー。
ねぇ、桜井さんは彼氏居ないの？」


「えっ？…私ですか？」


「…藤ヶ谷くんと付き合ってるんだっけ？」


「えっ！？なっ、付き合ってませんよ。」


「お茶、溢れてる。」


「えっ！？わっ、熱っ！！」


「大丈夫？！」


「…大丈夫です。」





私、何してるんだろ。

だから嫌いなの、給湯室。

女子の溜まり場だから。



「ほら、どうぞ。」


「えっ？」


「制服、濡れてる。
桜井さんって、お茶目なところもあるんだね。
ちょっと、安心した。」




そう言って、私にハンカチを渡してくれたのは

一課の北川さん。

明るくて、元気なイメージ。

誰とでも仲良くなれそう。

確か、北山さんと付き合ってるんだっけ？

社内では有名なカップル。



「ほら、もーなにボーッとしてるの？」


「あ、え？あ、ごめんなさい。
ハンカチ汚れちゃいますよ…っ」


「いいの、いいの。
私ね、桜井さんと話してみたかったんだ。」




北川さんはトントンと私の制服をハンカチで拭いてる。


私より背が低い北川さんは

拭き終わると顔を上げ、ニコッと笑った。



「桜井さん、柔軟剤何使ってる？」


「え？柔軟剤？？
あ、なんだっけ…ら、ラボンです。」


「あぁー！ラボン！
あの、ジャニーズの子がCMしてるやつね！」


「そうですね。」




何この人、すごい。

人見知りな私にもズカズカと入ってくる。



─────でも、

嫌な気持ちにはならない。

不思議な人。






「────あ、笑った。」


「…え？」


「笑わないで有名だなんて嘘。」


「……っ、」


「優しい顔してるの、見たことあるんだ。
藤ヶ谷くんと一緒に居るときに。」


「えっ…優しい顔？」


「そう。桜井さんって素敵な人なんだろなーって思ってたよ。」







クスッと笑って「お似合いだったよ。」と声をかけ

またね、と手を振って颯爽と給湯室を出て行く北川さんは

すごく可愛い人だと思った。

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