じんわり、ふわり。

7 ページ22

「では、宜しくお願いします。」

「こちらこそ。
わざわざこちらまで出向いて下さって
ありがとうございます。」

「いえ、御社とは長い付き合いですので。
これからもよろしくお願いします。」

「はい、よろしくお願いします。」




私の目の前にいる人は

さっき飛行機で爆睡してた人？


繰り広げられる会話が

玉森くんの言葉じゃないみたいで

ただただ、驚いてる。


玉森くんってやればできる子？

こんなにスマートに商談を終わらせるなんて。



「では後程。
せっかくこちらまで出向いて頂いたので。」

「ありがとうございます。
また後程伺いますね。
福岡は久しぶりなので楽しみです。」

「あはは、そうですか。
またご連絡します。」

「はい、では失礼致します。」




玉森くんの隣で一礼し、

応接室を後にする。


会社を出るまで玉森くんは

キリッとした爽やかな青年。


この人何者？

私の知ってる玉森くんじゃなくて

なんだか別人みたい。






「はぁー疲れた。」

「…あ、うん。
お疲れ様でした。」

「お疲れ様でしたじゃねぇよ。
Aなんもしてねぇじゃん。」

「な、なんもしてないって…」


私、今あなたが持ってる資料作ったんですけど！

なんもしてないって酷すぎる。

だけど、スマートに商談を終わらせた

玉森くんに何も言い返せなくて。

黙ったまま隣を歩いてると


「いつもの威勢は？
俺の営業トークびっくりしたの？」


なんて言ってくるから

さっきの言葉、撤回。

お疲れ様でした。なんて言うんじゃなかった。


やっぱり玉森くんは玉森くんだ。




「接待まで時間あるなー。
16時半か。」


腕時計を見ながら呟く玉森くん。

接待は、18時半からだったよね？

後、2時間もある。


「…とりあえず、ホテルに戻る？
それまで自由行動でいいかな？」


疲れたし、休みたいし。

せっかく福岡来たけど

ずっと玉森くんと一緒だったから

どっと疲れが。

接待もあるし休みたいのが本音。



「そうだな。
ホテル戻ろう。
接待まで自由行動ってことで。」

「うん。わかった。」


すんなりと私の言うことを聞いてくれた。

ホッとしたのがバレたのか


「Aってわかりやすいよね。」


そんなこと言われて

涼しい顔して私の前を歩いて行った。

8→←6

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す