じんわり、ふわり。

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───今、なんて？





「君に任せたいと。」


「……自信ありません。
今までずっと緒方主任のアシスタントでした。」


「現に緒方くんは決裁チェックしかしてないそうじゃないか。
先方が二度手間だと。」


「……」


「逆らえないよ。
先方はうちの課の大手取引先だ。
緒方くんはこの件について了承している。」


「……わかりました。
頑張ります。」


「桜井すげーな。
主任の仕事取ったよ。」


「そんなに男に勝ちたいか？
なぁ、藤ヶ谷、どう思う？」


「……」





ざわついてる。

わかってる。



仕事を頑張っても

周りの私への評価はこんなもの。





あぁ、あの時の主任の言葉。

そういう事か。









「桜井。」


「は、はい！」



外回りから戻ってきた主任が私を呼んだ。




「……これ、戸田商事の案件。」





渡されたファイル。

目を合わせてもくれない。




“俺に勝って嬉しいんだろう。”




頭の中がぐるぐる回る。

あの時はよくわからなかったけど、

今なら分かる。


主任はもう、この話を知ってたんだ。




「……はい。」


「よろしく。」




ファイルを渡され、

緒方主任はそのままフロアから出ていった。








“Aは素質あると思うよ。”

“営業、やってみない？”

“ほら、上手くいったじゃん。”

“Aのおかげだよ。”






総合職から営業補佐。

主任の下で営業になった。



主任は、私が仕事を覚え

ひとつひとつ出来るようになる度に

自分のことのように喜んでくれた。





───幸せだった。

ちゃんと中身も見てくれてる。

そう思ってた。




緒方さんだけは違うって。

そう思ってた。

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