人生ゲーム ~異次元からの旅人~

あの世界に ページ5

憎しみや悲しみで覆われた世界。

いくつもの国という塊同士がぶつかり合う世界。

努力をしない者は捨てられ、才能有る者が優遇される世界。

社会の役に立たぬ奴は、必要ない。
どれだけ社会の役に立つ事が重要な世界。

また、生まれた時から既に格差があり、恵まれればイージーモード。
神に見捨てられたらハードモード。

科学技術はほぼない。

この世界から見たらクソみたいな世界。

この世界は素晴らしい。

平和で毎日何も起こらない。
嫌な事は何一つない。
全ての人が優遇され、病気は治療で一瞬で治る。
科学技術は物凄く進んでいる。
宇宙にお出掛けしに行くのが当たり前の世界なのだ。


ただ、このゲームが世界で最も人気ということは、皆がゲームの世界に憧れているということ。

ーーーーーー
「おかえり。エフィル。」

「ただいま、母さん。」
お母さんは、優しい。

…ように見えるが、実は俺に関心がないだけ。


自分の幸せを貫いているのだから、他人はどうでもいい。
自分の息子にも、興味なんてない。

ご飯は機械が作る。
洗濯も同様。
その他全ても、機械がやってくれる。

だから、母として息子にすることなど、何もない。

それが当たり前だから、人間同士の付き合いなどほとんどない。

キリでさえゲームをする時だけの友達であり、それ以外に付き合いはない。

…兎に角、人付き合いがないのだ。


それに比べ、あの世界はいい。

人同士が団結しあい、協力して生きてゆく。

…いいな。


自分の部屋へ行き、ベッドへダイブする。

ああ、ゲームの世界へ行けたなら。

自分を満たしてくれるもので溢れているだろう。


あのゲームの名は『人生』。

一人の人間の生き様を描いたゲームである。

あの世界には沢山の人間がいる。


その中の一人を選び、ゲームの主人公として始める。


これがまたむつかしい。


運が悪いと、生まれないままゲームオーバーになることもある。

生まれても様々な困難があり、勝ち組と呼べる人生を生きれるのはほんの一握り。


勝ち組になれるよう、努力して終わらせるのがこのゲームの目的。

ゲームの中では一瞬でも気を抜いてはならない。

一瞬でも気を抜くと、失敗しやすくなる。


そういう綱渡りのような生き方だけれども、エフィルには羨ましくてしかたがない。





「ああ、あの世界へ行けたらいいのに。」


一つ呟き、夕食も忘れてそのまま眠りへとついた。

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