じんじん。（ybxym）

＝好きだった・１８＝ ページ18

「んぅ。・・・はぁ。・・」

肩で息をしたまま閉まったドアに

ピタリと張り付いて涙を誤魔化した。

ブレザーの袖口で拭って濡らし

目まぐるしく変わる車窓を見つめる。



さっきまで明るかった夕焼けの空が

急に雲で覆いつくされている。


自分の気持ちのよう。

もやもや。もくもく。


スッキリしない。

スッキリしない胸は、じんじん。と痛み

苦しくて辛い。

胸も、兄ちゃんが触れた背中も＿＿

何もかも、痛いんだ＿＿＿＿＿。



＿＿＿自宅の最寄り駅に着いて、駅を出たら

ビックリするほど、ボタボタと雨が降り出した。



雨の中を、走り出す＿＿＿＿。


ボタボタ零れる涙も、涙で濡れたブレザーの袖口も

ボタボタと降る雨で誤魔化せた。


でも・・。

涙は誤魔化せたのに、好きだった

＿＿好きの気持ちが誤魔化せない。



じんじん。ボタボタ。

おれの胸を痛くさせ、ずっとずっと降り続く。




どうしてそんなに、胸を痛くさせるの？

どうしてそんなに、胸を涙で濡らさせるの？


どうして？どうして、戻って来たの？


ねぇ・・兄ちゃん＿＿＿＿。



＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿



雨でビショビショになった体で

家の門を入り、玄関の前に立った。


泣きながら家の鍵を開けようとして＿＿＿

「あ・あれ？・・ない？
　＿＿＿家のかぎ・・なぃ・・・・。」



ビショビショのブレザーのポッケにも

ズボンのポッケにも・・ない。


「え＿＿っっ・・うそ・でしょ・・。」



鞄の中も、玄関のトコでガサガサ、ゴソゴソ。


「な、ない・・。うそ・・どうしよう。
　＿＿＿鍵、なぃ・・。」



放心状態で、玄関のドアに寄り掛かり

ズルズルとしゃがみ込んだ。


「＿＿なんで、なぃの・・？
　もぉ＿＿＿どおして・・。」



こんなに胸が痛くて、じんじん。痛くて

ボタボタ。ボタボタ涙が零れて

苦しくて悲しくて＿＿＿


それなのに・・鍵もないなんて・・・。



「はぁ・・。どうしよう・・もぉー・・
　父さんは出張で・・母さんは何時に帰ってくる・・の。
　はぁ・・・。」



ビショビショのまま途方に暮れ

膝を抱えて玄関の前に座る。

きゅっと俯いて、また悲しさが襲ってくる。



体も冷えて少し寒くなってきた・・

事態は最悪＿＿＿。もっと悲しくて辛くなる。


こんなんじゃビショビショだし、泣いてるし

コンビ二もファミレスにも行けない。


「もう・・７時になっちゃぅよぉ・・。」

＝好きだった・１９＝→←＝好きだった・１７＝

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す