じんじん。（ybxym）

＝好きだった・２＝ ページ2

『兄ちゃん＿＿＿＿』


女の人と肩を並べ歩いて・・

兄ちゃんちの玄関のドアに入っていく。



苦しかった。最初は分からなかった胸の痛み。

だんだん・・だんだん分かってくるの。

悲しくて、悔しくて＿＿どうして僕じゃだめなの？

となりに居るのは・・どうして僕じゃないの？



じんじん。じんじん。

おれの胸はグシャリと潰されて

ぺっちゃんこになってしまった。


息苦しくて、息が出来ない。


きつくきつくランドセルの肩バンドを

グッと握り締め＿＿じんじん。と痛む小さな胸は

ボタボタと零れる涙でびしょびしょに濡れてしまった。




今なら分かるんだ、あの女の人が彼女じゃなく

身体だけの関係だった＿＿＿って。



でも・・でも。同じ事。

悲しくて、悔しいのは同じ事。



僕には＿＿＿おれにはしてくれない。

目をなくして笑ってくれない。

強く抱き締めてもくれないの＿＿＿＿。




子供のおれは、会わないようにした。

もう耐えられなかったんだ。



兄ちゃんが大学生になって家を出たとき・・

ホッとした。安堵した。

ああ、よかった。やっと解放された＿＿＿

じんじん。と胸が痛む日々から

苦しくて悔しい日々から解放された。




ああ、よかった。



このままずっと、胸がじんじん。と痛んで

ボタボタと零れる涙で胸を濡らさずにすんで

よかった。



あ〜〜よかった。

好きだった(・・・)事を

忘れられる。やっと忘れられるんだ。




＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿





高校２年生、春＿＿＿＿＿。



新学期‥ブレザー姿の男子が、たくさ〜ん並んだ

体育館の壇上で、校長先生が話しちゅー。



おれは、背の順が前の方＿＿と、ゆーか・・

一番前なんだけどもっ。。むぅっっ。



・・一番前なので目立つからさ、

壇上に居る先生とかに見られちゃうから

眠くても、あくびもできやしな〜ぃ。



あーあ。‥と心の中でため息ついて

“校長先生、いつも話し長〜〜〜ぃっ”って

思ってたら、新学期恒例の新任の先生達の

紹介になった。




1人1人の自己紹介に、

ぼんや〜り‥“あ〜６人もいるのか〜長〜ぃぃ”って

また思いながら、ぼーっとして俯いて

自分の上履き見つめてた。



“あ〜‥ねむぃぃ・・”そんな事思ってた

おれの耳に＿＿すんなりと、するりと入ってきた声＿＿＿＿。



「＿＿数学担当の薮宏太です。よろしく。」

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